皆さんは”コロンブスの卵”という逸話をご存じでしょうか?
「知ってるよ!」
という方も多いかもしれませんね
「コロンブスの卵ってことはコロンブスが主人公なんだろ?」
という言葉自体を知らなくても勘のいい方もいるでしょう
「語感からすると料理名でしょ?」
という勘の悪い方もいるでしょうね!
「力が欲しいか…?」
なんかジャバウォックみたいな人もいますね!
実はこのコロンブスの卵の逸話、コロンブスが主人公ではないという説もあるのはご存知でしょうか?
コロンブスの卵とは?
そもそも”コロンブスの卵”とはどういった逸話なのでしょうか?
コロンブスの卵とは?
様々な困難を乗り越えアメリカ大陸(当時はインドだと思われていた)まで到達したコロンブス
彼はスペインに帰国後、貴族たちが集まるパーティーに参加することに。
そこで貴族がコロンブスに言う事には
「インド発見なんてただ大西洋を西に航海しただけ!たまたま!あなたが成し遂げただけですよ」
それに答えるコロンブスは卵を一つ要求するのみ、聴衆が見守る中コロンブスは卵を持ち言い放ちます。
「紳士諸君、賭けをしましょう。貴方がたは誰も、素手で何も使うことなしにこの卵を私の望むように立てることはできないでしょう。」
貴族たちはこぞって卵を立てようとしますが誰一人として成功するものは現れません
そこでコロンブスは卵の底をコツンと潰し見事机の上に卵を立てました、それを見た貴族たちはコロンブスのイワンとしていることを理解しました
要約すると、簡単に見えることでも一番最初にやったやつは凄い。ということです
ナマ言ってる貴族を一撃で黙らせたというスカッとジャパンみてーなこの逸話は、現代でも独創性を議論するうえで例に挙げられる慣用句となっています。
ただ、この逸話はコロンブスのものではない可能性があるというのです
じゃあ誰が行ったのか?
ではこのコロンブスの卵の逸話を実際に行った人物は誰なのでしょうか?
その名もずばりフィリッポ・ブルネレスキ、彼は15世紀のイタリアで活躍した金細工師、彫刻家、そしてルネサンス最初の建築家です
ではなぜこのフィリッポ・ブルネレスキが当事者ではないかと言われることになったのでしょうか?
Wikipediaによればコロンブスの卵の逸話はイタリアの歴史家・探検家のジローラモ・ベンゾーニが広めたもの、このベンゾーニが執筆し1565年に出版された『新世界史』にてこの逸話が紹介されていることが発端とされています
しかしこの逸話ベンゾーニが紹介する15年前に同じくイタリアの画家・建築家ジョルジョ・ヴァザーリが紹介した逸話に非常によく似ているのです!
ヴァザーリによるブルネレスキの卵
ではこのヴァザーリが紹介したブルネレスキの逸話はどういったものなのでしょうか?
フィリッポ・ブルネレスキ の逸話
1418年イタリアのフィレンツェにあるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の一番上に位置するドームの建築が行われることになりました。
ドームの模型公募が行われ三人の応募があり、そのうちの一人がブルネレスキその人
彼は二重構造の巨大なクーポラ(≒ドーム)を仮枠なしで築造する案を提出しました、当時の建設技術ではかなり異端な工法であり運営側は模型の提出を求めますがブルネレスキはコレを拒否して言います
「卵を平らな大理石の上に真っ直ぐ立てることができる人なら誰でもクーポラを建てられるはずである」
その場にいた職人たちが卵を立てようと試行錯誤しますが卵は立たず、卵を受け取ったブルネレスキは卵の底面を大理石に打ち付け見事卵を立たせることに成功します
しかし職人たちは「そんなん俺でもできる!」と非難ごうごう、それに対しブルネレスキは言い放ちます
「これと同じように模型や設計図を見たあとならば誰でもクーポラを建てられる」と。
結果としてブルネレスキ案が選出されることになりました
もうまんまコロンブスの卵と同じ構成の話ですよね、ベンゾーニはこのブルネレスキの逸話を利用しコロンブスのアメリカ大陸発見の箔をつけようとしたのかもしれません。
今日では一聖堂と大陸への到達という規模の大きさからか、この逸話はコロンブスの偉業の一つとして語られることが多くなっています
ブルネレスキの大聖堂について
ちなみに、このブルネレスキのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のドーム建設工事には実際に彼の設計図に則って行われ、彼は工事責任者に任命されました
しかし彼の手腕を不安視する意見があったため、ギベルティとバッティスタ・ダントーニオという二名も建設責任者として選任されたのです
これがメチャクチャ不満だったブルネレスキ、仮病を使って工事に出仕せず建築工事の知識のないギベルティをわざと困らせたり、
病気のために余命幾ばくもないないふりをしてギベルティに水平補強材と足場の建設のどちらか一方を選ばせ、ギベルティが担当した水平補強材の工事が失敗するなどの逸話が残っています。
このほかにもブルネレスキは木工職人のマネット・アンマナティーニを、計略を駆使して自分がマネットではなくマッテオという別人になったと信じ込ませたりと、意外とヤベー奴の片鱗をみせています
しかし遠近法を発明したりとガチの天才であることには変わりありません
コロンブスの”偉業”?
一方ベンゾーニの便宜で勝手に味噌がついた格好のコロンブス、従来であれば彼は希代の冒険家で大航海時代の先駆者という立ち位置だったわけですが、近年になって物凄い粗が出てきてしまった人物でもあります。
何しろ過去は偉業であったアメリカ大陸の到達も、現在の価値観で考えれば侵略行為にほかならず
彼の航海中の手記には先住民に対する感想が書いてあるのですが「従順で奴隷に適している」とか安い悪役そのもの。
彼のおかげで世界警察アメリカがこの世に存在しているのは確かです、
しかし実際に先住民を奴隷化し反抗的な部族には残虐な虐殺行為を行っているのはもちろん、彼がアメリカ大陸に到達したばっかりに現代のBLM運動にまで続く差別の歴史が始まってしまったと言っても過言ではないのかもしれません
聖徳太子が居なくなったり残虐皇帝が再評価されたり、歴史上の人物や出来事は研究や価値観のアップグレードで変化することが珍しくありません
コロンブスはその中でも株を落とした珍しい歴史上の人物と言っていいでしょう
回る回るよ
さてコロンブスの卵を中心にしてきましたが、歴史というのは生き物のように変化し形を変えていく様子が分かって頂けたと思います
じゃあ何が正義なのか?何を信じたらいいのか?って分からなくなってきたんじゃないですか?
これがメンタリズムです。
あとそれね、大戦を経験したやなせたかし先生と同じ感想。詳しくはやなせ先生の著書を読んでみようね、マジで泣けるから。
言いたいことはそんだけ、じゃ俺帰るから。黒板消しといて。
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