水木しげる御大といえば『ゲゲゲの鬼太郎』…と思われがち、実は今作『カッパの三平』も代表作の一つだったりします。
あらすじ
カッパに似た少年・三平は頭は悪いが純粋な少年
父は借金を残し家を出ており、母はその借金返済のために東京に出稼ぎに行っているため、三平は爺さんと暮らしている
ある日校長先生の気まぐれで、三平の通う小学校では水泳大会が行われれることとなった。なんと優勝者は校長と一緒に東京旅行という景品つき!
ガキ大将に優勝を譲れと脅されるも、三平は母親に会うために負けられない、帰り道の川で泳ぎの練習をする三平だったがあっという間に溺れてしまう!
はっと気づけば周りはカッパ・カッパ・カッパ…
そう、三平はカッパの国に迷い込んでしまったのだった!
キャラクター
野グソを愛する三平、三平にめちゃくちゃ似てるカッパのガータロウというメインキャラに加え
なんの説明もないまま喋ることができる存在として描かれる黒いタヌキのくろまろ、全然人をあの世に送ることができないダメ死神など
独特なタッチで描かれるキャラクターは非常に魅力的!
特殊能力や様々な武器を身につけている鬼太郎とは対照的に、主人公の三平はなんの特殊能力も持たない人間なのですが、実は水木しげるお気に入りのキャラクターだったりします
自然と妖怪と
自らの実体験を漫画に落とし込むことで数々の妖怪を描いてきた水木しげる、その背景にあるのは過酷な戦争体験と自然への畏敬の念です
基本的にほのぼのした作風と、とぼけた主人公のおかげでコミカルな作品となっていますが、身近な人の死を描いたり自然破壊を憂う一角鬼が出てきたり
今作でも命の儚さと自然へのリスペクトが節々に感じられます
重み
終盤、一角鬼が発する印象的なセリフがあります
「山を壊し川を汚す、人間こそ妖怪だ」
デビルマンや寄生獣など、様々な作品で似たような言い回しを見たことがある人は多いのではないでしょうか?
確かに安直なセリフかもしれません、聞き飽きたものかもしれません、
しかし激動の時代を生き抜き、第二次世界大戦からIT時代までを見てきた水木しげるだからこそ、この言葉に与える重みがあるのです。
うしおととら
田舎に住む純粋な少年とカッパが交流を深めるハートフルストーリー…ではなく少年とカッパが母親を探しにいくお話、
しかも母親は馬鹿でかい妖怪の眠りを助けるために人知れず頑張っている
どこかで見た設定だと思いませんか?
巨大な化け物を結界に閉じ込め続ける母と、母を知らずに育った少年と化け物の熱いストーリー
そう、名作妖怪漫画『うしおととら』のメインストーリーにめちゃくちゃ似ているんです!
かっぱの三平に関して原作のストーリーは非常に牧歌的らしく、映画オリジナルな展開なようですが藤田和日郎先生はここから着想を得たのではないでしょうか・・・?
ちなみに「熱かったよなぁ…痛かったよなぁ…」というセリフもありますが、似たようなセリフはうしおととらにも登場しますしNARUTOにも登場します
この点で言うとオマージュ順は
うしおととら→カッパの三平→NARUTOの順になりますね
パクリじゃないんです、オマージュなんです!作品が面白けりゃ文句なんてないんです!
野グソ
主人公の悪癖の一つに、外で排泄をする野グソがあります
何せこの映画主人公の野グソに始まって野グソに終わるんですよ
最後のシーンなんか女の子に荷物持たせて野グソしながら「夏も終わるなぁ…」で締めるんです
野グソしてんのに何いい感じで余韻出そうとしちゃってんですかね?
三平曰く「外ですると気持ちがいい」という生粋のノグサー(野グソする人)であるようですが、幼少期ノグサーであった筆者はなんとなく気持ちがわかります。
外ですると気持ちいいんすよ
今はしてないから許してください。
総評
ノスタルジーな世界観で少年とカッパの冒険を描きつつ、身近な人物の死や自然環境に警鐘を鳴らすリアルな一面もある一本、そりゃ文部省認定にもなるわな
ありきたりな展開ではあるので、どんでん返しなどは期待できないものの情操教育には非常におすすめな作品
ただあんまり子供に見せると野グソしだすかもしれないので注意が必要だゾ!
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