ヨーロッパ企画の劇団初となるオリジナル長編映画作品
同監督の『サマータイムマシンブルース』に続くに日常系タイムリープの傑作爆誕!
あらすじ
ある日の夜、仕事を終えたカフェの店長カトウが、店の2階にある自宅でギターを弾こうとしている。
ギターのピックを探していると、部屋においてあるモニターから彼を呼ぶ声が聞こえてくる。
カトウがモニターを覗くと、そこに映し出されたのはもうひとりのカトウ。
モニターの中のカトウは、自分のことを2分後の未来のカトウだと言い出すが…。
努力の一本
今作はまさに製作陣の努力の結晶だ。
過去邦画のゾンビモノとしては異例のヒットを飛ばした「カメラを止めるな!」同様、ワンカットのシーンが非常〜〜〜に長く続く
シーンの切り替わりも部屋の白い壁を映すシーンや、カメラが虚空を映す瞬間を上手く使い、自然な繋がりを生み出している。
シームレスすぎてボーッと見ていると、この作品全てがワンカットで繋がっているように錯覚してしまうほど繊細で巧妙なカット割だ
そのため演者はカメラが一度回ると、どこでミスをしたかがカメラが止まるまで分からなかったという
さらに輪をかけて撮影のハードルを上げているのが「2階と1階のTVが2分の時差で繋がる」という作品の設定だ
予算の都合上なのかハメコミは使わず事前に撮った映像をTVに映しながら、タイミングを合わせての撮影となる、そのため秒単位の細かい時間把握能力も必要となり、繊細なカット割含め撮影には血の滲むほどの努力が費やされている。
その努力の結晶が面白くないわけがない!
時系列
時間をテーマにしている割に時系列は分岐が一箇所あるもののほぼ一直線、TENETのように難解ではない
- カトウ・1階で仕事を終える
- カトウ・2階のTVと1階のTVが2分差で繋がることを知る
2分前の自分にタイムテレビのことを教えてやれ!と言われる
- カトウ・1階に降り2分前の自分にタイムテレビを教える
一通り言い終わると夢だと思って2階へ帰るカトウ
- カトウ・2階で2分後にコミヤが来ることを知る
- コミヤ来店、アヤと共にタイムテレビを知る
- コミヤ・カフェにオザワとタナベを呼ぶ
- コミヤ&アヤ・2階でオザワとタナベにタイムテレビを教える
コミヤは後のキーアイテム・ケチャップを出す予知を、アヤは2分後のオザワにLINEスタンプを送った
- カトウ・2階でメグミをライブに誘ってOKを貰ったことを確認
2分後カトウがメグミを誘ったが何故かOKを貰えず
タイムテレビとの整合性を取るためカトウは2分前の自分に嘘をついた
- オザワ・2階のTVと一階のTVを合わせ鏡にする
ドロステ効果によって2分以上先の未来と過去を見ることができるようになった
- オザワ・駅前までガチャガチャをしにいく
時間がテーマの作品にガチャガチャが出ると、シュタインズゲートのオマージュかと思ってしまう
キーアイテム・ゼブラ柄のダンゴムシが出る
- アヤ&コミヤ&タナベ・ゴミ捨て場まで金を見つけにいく
- メグミ・カフェに来店
カトウにキーアイテム・シンバルを渡す
タイムテレビでヤクザ風の男にメグミが襲われているのを目にする
- アヤ&コミヤ&タナベ・金を見つけてカフェに帰還
- ヤクザ・カフェに乱入
カトウは殴られ昏倒、ヤクザは金と何故かメグミを攫って5階へ消えていった
メグミは攫われる際タイムテレビで「助ける」というカトウの言葉を聞く
- カトウ・タイムテレビを担いで5階へ上がる
一階で2分後の世界を見ている4人からキーアイテムであるケチャップ・シンバル・ゼブラ柄のダンゴムシを貰う
- カトウ・ヤクザの事務所で大立ち回り
シンバルが拳銃の弾を弾くと言うミラクル
無事メグミを奪還する
- カトウ&メグミ・一階の4人が気絶させられるのをタイムテレビ越しに確認
ラスト10分ほどしか出てこないのに強烈なインパクトを残すタイムパトロール・キンジョウとイシヅカが登場
- カトウ&メグミ・タイムパトロールに忘れ薬を強要される
ここまでが分岐なしの時間軸
- カトウ&メグミ・忘れ薬を飲んで全てを忘れる
この夜の記憶を全て無くし、メグミはカトウのライブにも行く事はなく、タダのご近所の関係のままになる
- カトウ&メグミ・忘れ薬を飲まずに吹き飛ばす
バタフライエフェクトによって時間軸が分岐、キンジョウとイシヅカは消えてしまう
- カトウ&メグミ・SFの話で意気投合
- カトウ&メグミ・タイムテレビの電源を落とす
タイムテレビがどうなったかの後日談はない
考察
タイムテレビがスタートしたのはいつ?
2階のテレビと1階のテレビが2分間の時差で繋がっている、それを教えたのは2分後のカトウだった。
ではその2分後のカトウは誰にその事実を教えてもらったのか?
それを考えると堂々巡りになる。
作中タイムテレビの合わせ鏡というドロステ効果を使い、2分以上の未来も過去も見ることができるようになったが、実はこの物語自体ドロステ効果でスタートしているのだ。
ジョジョ5部のボス・ディアボロが、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムに攻撃され永遠に真実に辿り着けなかったように、この疑問も真実にたどり着くことは決してない。
タイムテレビで見える未来
タイムテレビで見ることのできる未来は中盤までは確定した事実のように描かれる、もしタイムテレビと違った行動をとってしまうとタイムパラドクスが起きて危険、だからタイムテレビと同じ行動を取らなければいけないと。
しかし物語の終盤、主人公たちは初めてタイムテレビが映し出した未来とは違う行動を起こしタイムパラドクスを発生させることになる。
その結果、未来からやってきたタイムパトロールの2人は存在しなかったことになって消えてしまう。
ここから分かるのは、タイムテレビが映し出すのは確定した未来ではないこと、タイムパラドクスが起きると未来が大きく変化することがわかる。
つまりは映画の世界線はあくまでもカトウとメグミが記憶を保ったまま終わるルートであっただけで、無限の世界線が存在することになる。
カトウがメグミをライブに誘って断られていたが、ココで一発OKをもらっている世界線もあったに違いない、そのためタイムテレビでは「OKをもらった」と言っていたカトウは嘘をついていなかった可能性もあるのではないだろうか。
総評
時間をテーマにするのは同監督の『サマータイムマシンブルース』も同様であったが、それよりもさらに規模の小さな物語となっている今作。
スケールダウンはしているものの、演者と製作陣にかかった負担は恐らく今作の方が高いだろう。それだけの労力のかかった作品であり、面白い作品でもある。
ワンカットというと『カメラを止めるな!』が想起されるが、カメ止めよりかも実績がある分映像も脚本も洗練されているように感じた。
何があるか分からないから未来には希望が持てるし、楽しみが持てるという前向きなメッセージが込められた映画、おすすめだ!
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