アシュラ 貧すれば鈍する人間の本質

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MOVIE
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ジャージ秋山原作の漫画作品、連載当時カニバリズム描写が世間から非難の的になった問題作でもある

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あらすじ

洪水やかんばつが相次ぎ、およそ10年もの長い期間続いた応仁の乱が勃発(ぼっぱつ)した1400年代の半ば。

アシュラは荒野と化した京都でケダモノのように育ち、生き抜いていく。

そんな中、優しい少女・若狭や法師の教えにより、言葉や笑うことを覚えたアシュラ。

しかし天災が訪れ、人々は貧困によって追い詰められていき……。

カニバリズム

1970年に週刊少年マガジンで連載が開始された今作、作中の人が人を喰うカニバリズム要素が大人たちの逆鱗に触れ有害図書指定を受けている。

そんな経緯があってかアニメ化は不可能であるとされていた今作であるが、長い年月を経ることで時代が追いついた。カニバリズム要素はこの作品の主題では全くないことに気づいたのだ

あくまで人間が本当に困窮した時、むき出しにされる人間の醜い本質がテーマなのだ、カニバリズムはその演出でしかない。

人間の本質

人間は動物であって動物とは違う、動物には知性があっても理性までは兼ね備えていないからだ

作中の主人公であるアシュラは動物であった。

言葉も知らず愛情も知らずに育ち、理性を兼ね備えていない。そんな中理性を兼ね備えた若狭や法師と出会うことにより、徐々に理性を身につけていくことになる。

最終的には若狭を助けるために、自分以外のもののために殺しをするまでに成長する。

その一方で若狭をはじめとした村の人間は、災害と飢饉によって人間の気高さを忘れていくことになる。

娘を人売りに売らなかったことを後悔する、目の前に置かれた肉が人肉であっても食べようとする、金のために少年を殺そうとする。

平安時代末期の疲弊した社会は、人間を動物へと変えてしまった。

『ベンジャミンバトン』は老人として生まれ段々と若返っていく常人とのすれ違いを描き、『アルジャーノンに花束を』は知的障害のあるチャーリィが天才になっていく中での葛藤を描いているように

アシュラは動物から人へ、村の人間は人から動物へと変貌するすれ違いを描いた作品なのだった。

作風

何故かアニメではあるが全編フル3Dで製作された本作

漫画的な演出をするため、髪の毛にあえて斜めの線をいれる「ハッチング」という特殊効果が使用されていたり

迫力を出すために手を実際のモデルより大きくする、などさまざまな演出技法が使われている。

公開当時はPS3末期の2012年、既に高解像度の3D作品が多く発表されていたが、今作は懐かしいPS2の画質を思い出させる。

野沢雅子

声優が豪華なことも挙げておかなければいけない

ヒロイン若狭は林原めぐみ、その恋人役は平田広明

法師役では北大路欣也という磐石の布陣。

さらに主人公のアシュラは御歳83歳のでえベテラン野沢雅子だ!

ドラゴンボールの悟空がよく発する

「グェアッ!ガッ!!カッ!!」

というダメージボイスを全般にわたって聞くことができるので、悟空のリョナが好きな人

野沢雅子のリョナが好きな人にはめちゃくちゃオススメできるゾ!

総評

世間というものは上辺しか見ない。今作が有害図書指定された経緯もカニバリズムという上辺しか見ずに決定したに違いない、カニバリズムはあくまで人間の本質を描くための演出でしかない、通しで見ればそれが分かるだろうに。

そんなこんなで、万人にお勧めできる作品ではないものの、気高くあろうとあがく人間の美しさを垣間見ることのできる作品で学ぶところの多い一本であると思う。

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