1977年、斜陽となっていた日本映画界に降り立った天才監督・大林宣彦の処女作。
キマってるとしか思えない映像表現、メディアミックスという新しいメディア展開、まさに早すぎた名作と言わざるを得ない一本。
あらすじ
東京郊外のお嬢様学校に通うオシャレは、お嬢様然とした風貌に反し、明朗快活な現代っ子。
親友のファンタとともに所属する演劇部のエースとして「化け猫伝説」の練習に励む。
夏休みが近いある日、オシャレは突然帰国した父から再婚相手を紹介されショックを受ける。
夏休みに父や再婚相手と軽井沢に行きたくない彼女は、いつも演劇部の合宿先に利用していた旅館が一時休業になったと知らされ、代わりの合宿先に長年会っていなかった“おばちゃま”の家を提案してしまう。
慌てた彼女は後からおばちゃまに訪問したい旨を手紙で伝え、許可をもらう。
そして、オシャレとその仲間達は羽臼屋敷に向かう。しかし東郷先生が出発前に事故で遅れてしまい、部員だけで行くことになる。
電車に乗り、バスに乗り、更に徒歩で羽臼邸に到着。7人はおばちゃまに歓迎されるが、その後降り掛かる惨劇の事は予想だにしていなかった――。
(Wikipediaより引用)
斬新
脳に直接叩き込まれるような強烈な映像、それが『HOUSE』一番の魅力と言ってもいいだろう。
70年代特有のクッセェ演技は最初だけ鼻につくかもしれない、視聴を中断したくなるかもしれない。
しかし我慢して視聴して欲しい。
そのクッセェ演技をする少女と明らかに合成である背景のミスマッチが非日常感を徐々に増していく。
ストップモーションや会話が聞こえないほどクソでかいBGM、緑や赤を基調とした合成をはじめとした特撮で、チープながらもキメてるとしか思えない異質な雰囲気を醸し出している。
特筆すべきはオシャレが三面鏡の前に座るシーンだ。
鏡の中のオシャレが徐々におばちゃまに肉体を乗っ取られてゆく様を、顔面がパズルピースのように剥がれ落ち全身が炎に包まれるという演出で描いている。
全体的に緩く、登場人物たちの悲壮感や緊迫感が終盤まで伝わってこない作品なのだが、このシーンだけは話が別。
合成映像で燃え上がる人体は、不気味さの中に美しさと神々しさまで感じられる。
今作のハイライトと言ってもいいだろう。
そのあとも次々とピアノや電灯、布団に食べられるという衝撃的な展開とチグハグな映像で脳みそが疲れる。
メディアミックス
大林監督が突出しているのはその映像だけではない。
今作は日本で最初のメディアミックスを行った作品でもある、宣伝の才能まであったのだ!
映画を作るまでに出演する7人の少女たちを“ハウスガールズ”としてグラビアを撮影したり、ビーチでキャンペーンを行った。
更にラジオドラマを制作し、月刊マガジンで読み切り漫画を掲載。
現在では当たり前となった複数のメディアを使っての宣伝を編み出した。結果として作品は当時のティーンを中心に話題となったのだった。
まぁ劇中登場人物の裸が見れるので、多分筆者が公開当時少年だったら絶対劇場まで走っていると思う。
元凶
また、この作品はアイドルをホラーに出演させた初の作品とも言われている。
令和の時代になっても綿々と続くこの“アイドル×ホラー”という方程式は呪いにも似ている、
アイドルを主演にすることで確かに一定の固定客が見込める、計算ができる映画が完成するという利点はある。
けれどもアイドルが主演で怖いホラー映画が今まであっただろうか?いや無い。
計算できるという利点に極振りした駄作ホラー映画が乱発されることで、Jホラー映画全体の質が低下しているように思えてならないのだ。
アイドル×ホラーは呪いに似ている
もみあげと亜星とゴダイゴと
大林監督のパワーで70`sのスターたちがチョイ役で出演していることも魅力の一つだ。
歌うまもみあげおじさんの尾崎紀世彦は何の役にも立たずにバナナになる先生役、小林亜星は何の説明もなくガイコツになっちゃうスイカ屋、ゴダイゴは駅前でナンパするチャラ男たち。
コレこの人である必要ある?という贅沢な人選
更に当時スター街道を邁進していた三浦友和も友情出演、作品に花を添えている。
まぁ平成生まれからしたら全員若すぎて検索しないと誰が誰かわからないんだけどね。
総評
家自体が化物という筋書きは当時斬新であったが、現代では陳腐化してしまっている。
演者もただのアイドルで演技自体もクッセェしBGMも爆音すぎて何言ってるか分からんシーンも序盤に散見される。コレだけ見ると時代に取り残されるであろうしょうもない作品が出来上がる予感しかしない。
しかしそれを補って余りある映像のセンスがこの作品を名作へと押し上げている。
序盤の展開で作品を見限ることなく、脳に直接叩き込まれる映像を是非楽しんで欲しい!
にほんブログ村
コメント