「友情・努力・勝利」特に週刊少年ジャンプの三代原則として知られる標語で、男性のほとんどが好きな要素だが、酔拳も実はこの三大原則に沿った作品だったりする
作品名(評価):ドランクモンキー酔拳(A)
制作(公開年):イギリス領香港(1978)
監督:ユエン・ウーピン
主演:ジャッキー・チェン、ユエン・シャオティエン他
あらすじ
酔えば酔うほど強くなる、という秘伝の拳法の“酔八拳“をおかしな師匠から受け継ごうとする若き弟子が、その教えを見事に会得し、かつて侮辱を受けた悪漢たちに復讐するまでを描く。
聖子ちゃんカット
言わずと知れたカンフーマスター、ジャッキーチェンの出世作である酔拳
1978年当時、カンフー映画はまだまだ復讐劇が主流でジャッキーが出演する作品も同様の作風が多かった
そんな中復讐劇というシリアスな展開を放棄して、コミカルに振り切った一本だ
その証拠にジャッキーも見事な聖子ちゃんカットをしている
ジャッキー・ジャック事件
前述の通り当時のクンフー映画=復讐劇という常識をぶっ壊した今作は、「ゴールデン・ハーベスト社」によって製作されているが、ジャッキーは「ロー・ウェイプロダクション」の所属俳優でゴールデン・ハーベスト社に出向し撮影されていた
ロー・ウェイプロダクションではイマイチな役柄や社長であるローとの折り合いも悪く、さらに撮影された映画の興行収入も奮わないなどの煮え湯を飲まされていたジャッキーは、酔拳や蛇拳での成功を目の当たりにしてロー・ウェイプロダクションを脱退しゴールデン・ハーベスト社への移籍を断行
それに怒ったロー・ウェイに拉致されるという事件が起きた、これが世に言う”ジャッキー・ジャック事件”である
”ジャッキー・ジャック事件”がおきたのは1979年、語呂合わせで覚えるときは
「いくなく(1979)ない?ジャッキー・ジャック事件」と覚えよう!
友情・努力・勝利
そんな裏話まである今作だが、ただ単に聖子ちゃんカットのおちゃらけ主人公がカンフーするだけではない、古今東西の子どもたちが熱狂した漫画雑誌・少年ジャンプの三大原則のツボを押さえた作品でもあるのだ
友情
作中ジャッキー扮する黄飛鴻は素行の悪さを咎められ、地獄の特訓で有名な蘇化子のもとへと送られる
最初こそ蘇のしごきに音を上げて脱走したり不真面目な飛鴻に愛想を尽かしたりなど紆余曲折があるものの、次第に師弟関係が深まり蘇の奥義である「酔八仙」を伝授する間柄になる。
三大要素の一つ友情は飛鴻と蘇の師弟という関係を越えた関係性だ
努力
飛鴻は腕っぷしが強く地元じゃ負け知らずのチンピラ崩れ、ところがたまたま出会って喧嘩を売った凄腕の殺し屋・閣鉄心に完膚なきまでに叩きのめされ人生初の敗北を味わうことになる。
不真面目だった主人公は一念発起し、一度は脱走した蘇に教えを乞うまで精神的に成長することになり、宙吊りになりながら腹筋する有名なシーンをはじめとした想像を絶する修行を積み強くなる
敗北を知って強くなるこの黄金パターンは、まさに三大要素の一つ努力そのものであり、スポ根漫画にとてもよく使われる要素。コミカルだけど熱いのだ
以上のように酔拳はジャンプ漫画の三大原則を忠実に表現したような作品なのだった。そりゃ面白いわな
勝利
ストーリー最大のカタルシスを生むライバルキャラからの勝利、中でも熱い展開は勝負の中で成長していく主人公だ
今作でも酔拳を看破した鉄心に苦戦するものの、鉄心を上回る速度で成長した飛鴻が師匠から受け継いだ“酔八仙”の中の一つ、何仙姑を自己流にアップデートし勝利を収めている
ジョジョ3部のラストバトルでも承太郎がディオのザ・ワールドを上回る成長を見せ勝利したように、この手法は人気漫画に必ず入ってくる要素といってもいい
実在の人物
ちなみに主人公の黄飛鴻は1800年代後半に実在した人物。同名なだけで酔拳の使い手ではないのが残念であるが、無影脚と呼ばれる「影すらも映る暇のない連続足技」を駆使したバッチバチの武闘家だった。
史実では西洋人が企画した「素手で猛犬を倒せたら賞金」の賭けに挑戦し「無影脚」で瞬殺したらしい。猛犬が可哀想
総評
それまでワンパターンであったカンフー映画を、少年漫画でよく見る技法でコミカルながらもアツい展開にアップデートした記念碑的作品
ジャッキーの俳優としての方向性を決める上で欠かせない一本、とっつきやすいカンフー映画のさらにとっつきやすい入門編中の入門編。王道的展開はオドr気はないけれども、THE面白だ
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