チャラチャラした恋愛映画とは一線を画す、超プラトニックラブストーリー
作品に関する重要なネタバレがあります!ご注意ください
あらすじ
時は昭和35年。
映画監督を志す健司は通い詰めた映画館「ロマンス劇場」で憧れのモノクロ映画のヒロイン、美雪と出会う。
健司はモノクロの姿のまま現れた美雪に色とりどりの現実の世界を案内するうちに2人は惹かれあっていく。
しかし、美雪は健司に伝えていないとある秘密を抱えていたのだったー
日本の恋愛映画
近頃の日本の恋愛映画ときたらなんだろうか、
教師と生徒との恋愛だとか高校生同士のくっついたり離れたりだとか…
エロ漫画か!!
それに比べて今作のなんと突飛なことだろう
”白黒映画のヒロインが銀幕から飛び出してきて恋をする”
ちょっと捻ったエロ漫画じゃねーか!!
確かにちょっと捻ったエロ漫画に見えかねない今作だが、音楽と色彩センス。そしてベタベタな展開がメチャクチャ泣ける良作なのだ。
音楽と色彩
今作のヒロインは白黒映画から飛び出してきたお転婆なお姫様、「色を知らない」(=色欲を知らない)という日本語遊びもあるのかもしれないが、”色”というのが非常に重要なテーマとなっていく。
白黒という濃淡しか区別することのできない単純な世界から、色彩溢れる世界へと案内され、次第に二人が親密になっていくシーンがある。
その中でも藤棚を二人で歩くシーンはひと際に印象的。
昭和30年代のモダンな服装や世界観ももちろん魅力的ではあるが、今作のビジュアル的ハイライトはこの藤棚のシーンであると言っても過言ではない。
感動を与える材料として次に挙げられるのが音楽だ。
ココぞ!というところで何となく『ALWAYS三丁目の夕日』や『仁』で聞いたような壮大で感動的な音楽が流れる。
「ハイ、ココで泣いてくださいよぉ~」という作り手側の意志が透けて見えてしまう、という人は苦手かもしれないが個人的に音楽もストーリー展開もベタであればあるほど良いと思う。
使い古されている、ということは使い込まれるほど面白く感情を動かされるということに他ならないからだ。
触れられないというプラトニック
ヒロインの重要な秘密として物語後半に明かされるのは”人のぬくもりに触れることが出来ない”という点。
”触れられない系映画”でいうと何かと世間を騒がせるジョニー・デップ主演の『シザー・ハンズ』なんかも存在するし、それに異世界からのボーイミーツガールはとってもよくあるベタな展開なのだが、
かつてこれほどまでにプラトニックな恋愛映画があっただろうか?
手を繋ぐことも、肩を預けることも、ましてやキスなんてもってのほか。
肉体的接触が無くても男女は愛し合えるのか?
という、生殖本能に反する壮大なテーマをぶっこんで来たのだ。
どうせ下らない恋愛映画なんでしょ?という視聴前の自分に言ってやりたい。
「あなどるな」と。「泣けるぞ」と。
このご時世であるから、おそらく視聴後は健司と美雪の微妙な距離感に「ソーシャルディスタンスじゃんwww」とかいうやつが出てくるだろうしTV局側も狙ってやってるんだろうが、
ビックリするほど寒いので本当にそういうのはやめた方がいい
総評
表面上では流行ってる”恋愛映画”だの”なろう系アニメ”なんかはなんとなく浮ついてて嫌いだという人もいるかもしれない。
現に筆者もそうだった。
浮浪者、紳士、詩人、夢想家、孤独な人、皆いつでもロマンスと冒険にあこがれてるんだ。
作中に出てくるチャップリンの名言にもあるように、視聴後にはそんなうわっつらな感情が吹き飛んで、純粋に「良いもの見たなぁ」という気持ちにさせてくれる一本。
社長令嬢役の本田翼や看護婦役の石橋杏奈の演技は正直微妙ではあるが、そうした点をカバーして余りあるほどの感情が吹きだすこと請け合いだ。
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