竜とそばかすの姫 アレもコレもやりたい!とっ散らかった一本

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『時をかける少女』で一躍ジャパニメーションの代表格となった細田守監督の最新作

とにかくやりたいことを詰め込んだ結果、もうどうしようもなくなっちゃった一本を徹底レビューしていく!

作品名(評価):竜とそばかすの姫(C-)

制作(公開年):日本(2021)

監督:細田守

主演: 中村佳穂 、成田凌 他

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あらすじ

高知県の田舎町に住む女子高生・すずは幼い頃に母を事故で亡くして以来、大好きだった歌を歌えなくなり、父との関係にも徐々に溝が生まれていた。

作曲だけが生き甲斐となっていたすずは、ある日全世界で50億人以上が集う超巨大インターネット空間の仮想世界〈U〉にベルという〈As〉(アバター)で参加。

そこでは自然と歌えたすず(ベル)は、自ら作った歌を披露していくうちに歌姫として世界中から注目を集め、遂にはコンサートが開かれるが、コンサート当日、突然謎の竜が現れて、コンサートは台無しになってしまう。

だが、ベルはそんな竜が抱える大きな傷の秘密を知ろうと接近し、竜もまたベルの優しい歌声に少しずつ心を開いていく。そんな中、世界では「竜の正体探し」が動き出す。

Wikipediaより引用

オラ、ディズニーになりてぇ!

今作を端的に伝えるのであれば”中途半端なディズニー”と言わざるを得ない

まず主人公は地味な女子高生、これは日本のアニメっぽくていい、この地味JK・すずがネット上の仮想空間Uに入り込むことでストーリーが展開していくことになるのだが、そのUでのアバターの名前がベルなのだ。もうココでちょっとディズニーを匂わせている

そして第二の主人公である竜、Uを荒らす問題児でめちゃくちゃ強いアバターで竜と呼ばれる外見の通り二本の角や髭の生えた外見をしており、マントを羽織っている外見も込みでモロに野獣をオマージュしている

もうこの時点でベルと野獣の2人が揃い”エセ美女と野獣”が完成してしまった

さらに作中にはキーアイテムとして薔薇を登場させ、ベルと竜が心を通わせるシーンもオマージュ元よろしくちょっと踊ったりしている。

また、ベルのキャラクターデザインも何かちょっとバタ臭くて細田守味が無いような気がしてくる、これは『アナと雪の女王』『ベイマックス』などのキャラクターデザインを務めてきたジン・キムがベルのキャラクターデザインを担当していることに起因している

物語終盤のライブシーンでほんのりと灯る明りも、なんだかそこはかとなく『塔の上のラプンツェル』ぽい

ディズニー作品みたいなモノを作りたいんだ!という意識が端々から感じられるのだが、何でそんなに本家に寄せてしまったのだろうか?今まででも十分にオリジナリティのある日本アニメーション界の寵児だったのに…

アレもやりたいコレもやりたい

ディズニーっぽさを演出したい!という気概の一方、肝心のストーリーもやりたい事がありすぎて取っ散らかった印象を受けてしまう、以下が作中に消化した主な出来事だ

  • 1
    ベルの誕生、歌う事への葛藤
  • 2
    バーチャルアーティストとしての成長
  • 3
    竜との出会い、竜の正体探し
  • 4
    幼馴染しのぶ君との関係の清算
  • 5
    微妙な距離感の父との復縁
  • 6
    ルカちゃんとカミシンの関係
  • 7
    竜の正体救出作戦

ちょっと要素が多すぎる…

対照的に細田監督の代表作『時をかける少女』はどうだっただろうか?

  • 1
    真琴タイムリープ能力を手に入れる
  • 2
    能力を都合の良いように使う
  • 3
    千昭に告白される

  • 4
    千昭が未来人であることを知る
  • 5
    すぐ行く!走っていく!

も~~~~~~~~シンプル!!!!すこ!!!!!

時かけはタイムリープという要素を持ってはいたが、高校生の甘酸っぱい恋愛というぶっといテーマがあった、脇道にそれること無くそれだけを描いていたのだ。

『竜とそばかすの姫』は高校生の恋愛に的をしぼるでもなく、ミュージカル要素やサスペンス要素を取り入れたいばかりに、一番の盛り上がるラストシーンがパっと出の竜の正体を助けるというシーンになってしまっていた。そのためカタルシスが生まれていなかったように思う。

主人公の相手方になるキャラクターも竜としのぶ君という二人が存在しているのも良くない、どっちともいい感じになって結局どっちとも付き合わないまま終わる。ココに今作のどっちつかず感や中途半端さ加減が現れてしまっているようだ。

映像美

©️2021 スタジオ地図

ここまで不満をついてぶちまけてきたが、もちろん良い部分もある

今作はOPからベルのライブシーンで始まる、ベル役の中村佳穂によるケルトっぽくもありエキゾチックさも感じさせるような無国籍な歌唱力と、イギリスの建築家エリック・ウォンがデザインしたUの世界観は唯一無二。

かつてスタジオジブリがCHAGE and ASKAの楽曲のMV(ミュージックビデオ)を製作したように、今作のライブシーンはアニメーションによるMVに無限の可能性が眠っていると感じさせてくれる。

恐らく今作はネット配信されるであろうが、序盤の見どころであるライブシーンで画質の都合上めちゃくちゃにブロックノイズがかかってしまうと思うので、美麗な表現を楽しむためには映画館に足を運ぶしかない。

ディズニー作品を作りたい!という気持ちは空回りしてしまってはいるが、映像表現にその素晴らしさの片鱗を感じた

総評

ディズニー作品のように全世界にウケたい!という意識の高さは映像の素晴らしさになって表現されているが、肝心の内容いえば主人公に感情移入できないまま取っ散らかったストーリーをダラダラ見させられているような気持になってしまったのは残念。

事件を解決したとしても、パっと出のキャラクターが救われただけなので主人公以上に思い入れが無く、カタルシスが全く感じられない。

細田守監督は世界に飛び出す前に、もう一回あまずっぺぇあまずっぺぇ高校生の恋愛模様を描いた作品を作ってほしい!

ていうか作って!!!!見たいの!!!!!!!

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