『タクシードライバー』『レイジングブル』に続く、スコセッシ×デ・ニーロの黄金コンビが贈る社会派クライムコメディ!
『タクシードライバー』 とおなじくジョーカーのオマージュ元でもありますよ!
あらすじ
コメディアンとして有名になりたいと考えているルパート・パプキンは、有名コメディアンのジェリー・ラングフォードを熱狂的ファンの群れから救い出し、強引にコネをつける。
「今度事務所に自演テープを持って来い」と言われて有頂天になったパプキンは、早くも自分はスターになったと錯覚し、昔から好きだった女性リタにも接近するが……。
メンヘラ男
スコセッシ監督作品の特徴として、何らかの精神疾患を抱え、社会から疎外されてきた男が主人公になる場合が多いことが挙げられますが今作も例外ではありません。
タクシードライバーで同じようなタイプの主人公・トラヴィスを熱演したデ・ニーロが、再びメンヘラ男を熱演するんです!
さらに精神疾患具合もパワーアップ
承認欲求と妄想癖によって突き動かされ狂気に駆られていくルパート・パプキンという男を演じます。
タクシードライバーとの比較
トラヴィスには更生の余地として”アイリス”という一人の少女が用意されていました。
しかし今回ヒロイン的に登場するリタはパプキンに更生の余地を示すどころか、病状の悪化を促進してしまう結果に。
さらにもう一人出てくる女性キャラクターのマーシャなんかは一緒になって犯罪行為をするメンヘラ女です。
したがってパプキンの病状も深刻で、スコセッシ監督も「トラヴィスよりもパプキンの方が危険」と明言するほど。
また、トラヴィスには歪んではいるものの”正義感”を持ち、
それが曲がりなりにも行動原理となっていたので視聴者としても結末に納得が出来た気がしました。
しかしパプキンの行動原理は”利己的な承認欲求”のみ。
自分は才能に溢れているんだからテレビに出てスターになりたい、ただその一点の欲求を叶えようとした結果、FBIをも動かす犯罪に走ったのです、確かに凶悪な主人公であるといえます。
ジョーカーとの比較
2020年アカデミー賞11部門にノミネートされた話題作『ジョーカー』はまず間違いなく今作の影響を受けています。
残念ながらスコセッシ監督はジョーカーを見ていないそうですが、ざっとあげるだけでもこれだけの類似点があります。
- 主人公が精神疾患を抱えている
- 妄想型の精神疾患である
- スタンドアップコメディアンに憧れている
- 人気コメディアンにけなされる
- その人気コメディアンに危害を加えようとする
- なんやかんやあって人気テレビ番組に出演する
- カリスマとして人気になる
これだけ似ているとリメイク作品になってしまいそうですが、
前述したタクシードライバーとストーリー展開が上手いことミックスされているので飽きることはありませんよ。
ドン底で終わるより一夜の王
今作の主人公パプキンの行動は決して褒められたものではないでしょう
しかし有名になりたいがために行動したアグレッシブさは見直すところがあるかもしれません。
中見出しのセリフは終盤パプキンの口から出るモノなのですが、これまで病状が悪化していったパプキンが唯一真人間に戻って発したセリフであり非常に印象強く残っています。
筆者含め、上に噛みつく牙を抜かれた日本人にこそ足りない反骨精神が学べるのではないでしょうか?
ラストシーンに関しての考察
今作で議題に上るのがラストシーンが妄想であるのか否か、という点です。
筆者はラストシーンについてパプキンの妄想であると考えます。
恐ろしいほどの笑いへの執着があった主人公でありますが、笑いに重要なのは何よりワードセンスと人の感情を読む力だと思います。
芸術人気質ではあると思うので、収監中に小説を執筆することはできたでしょう、しかし番組収録時やテープの時点であれだけ貶されてしまうワードセンス、そして利己的な性格を見るにスタンドアップ・コメディで一発当てることは無理だと考えたからです。
つまりはまだ彼の症状は寛解しておらず、まだ病的な妄想癖を持っていることになります。
多分パプキンはまた何かやります。
総評
今回も役作りのために数か月間に渡り、スタンダップコメディアンたちのステージを鑑賞し続けたロバート・デ・ニーロの演技はもちろん圧巻。
そしてその演技力に裏打ちされた社会性のあるストーリーも圧巻です。ジョーカーを視聴したあとなら既視感のある展開かもしれませんが、やはりオリジナルはオリジナル。見て損はありませんよ。
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