スラムドッグ$ミリオネア 金と愛 明暗分けた兄弟の物語

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S級作品
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第81回アカデミー賞では作品賞を含む8部門を受賞!クイズミリオネアを軸に現代インドの陰と陽を描き切った社会派作品!

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あらすじ

インドの大都市ムンバイの中にあるスラム、ダーラーヴィー地区で生まれ育った少年ジャマールは、テレビの人気クイズ番組『コウン・バネーガー・カロールパティ』(日本版は『クイズ$ミリオネア』)に出演する。

そこでジャマールは数々の問題を正解していき、ついに最後の1問にまで到達した。しかし、無学であるはずの彼がクイズに勝ち進んでいったために、不正の疑いがかけられ、警察に連行されてしまう。そこで彼は生い立ちとその背景、そして一人の女性について語り始める。

名作映画請負人

今作の監督は『トレイン・スポッティング』や『28日後…』などマルチなジャンルの映画を撮ることのできるダニー・ボイル、そして主演は『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』や『ホテル・ムンバイ』でも主演を務めたデーブ・パテール!

この作品で長編映画での俳優デビューを果たし、一世を風靡したそうです。なんと出演当時18歳!なのにもかかわらずどの演者よりも上手く、主演という事を差し引いてもどの演者よりも目立った存在であることは間違いないでしょう。

出演作品はまだまだ少ないものの、インドが舞台でデーブ・パテールが出演している、というだけでもう面白い作品だろうなぁと想像できる名作請負人です。

現代インド

”ボリウッド”とも言われるインド映画界、国産映画はアクションや恋愛などが全てごちゃ混ぜにされたジャンルのサラダボウルのような作品が多く、どれも絶対にダンスシーンがあることでお馴染みです。

しかし、そうしたボリウッド産の大衆映画ではインドが抱える暗部までは決して見えてきません、あえて見せないようにしているのかもしれませんが。

インドが舞台で国際共同制作されている今作は、その隠蔽されているインドの暗部を赤裸々に描き出します。孤児を集めて物乞いをさせるだけならまだしも、ある程度成長した子供は意図的に目を潰され障碍者にされる、というフィクションのように胸糞の悪い行為が実際に行われているという事実。

世界で一番人が集まる国はそれだけ人の命の価値も軽いのです。

対照的な兄弟

この映画で秀逸なのは、クイズが出題されるたびにその出題内容に関わる出来事を通し主人公ジャマールと兄サリーム、そしてラティカーの人生を追体験できるという点。

もう一つが対照的な兄弟の生きざまを印象的に描き切ったという所です。


弟・ジャマールはひたすらラティカーへの愛に生きました。

一度目は慈善活動家の手、二度目は兄の手、三度目は街を牛耳るギャングの手。三度もラティカーとの決定的な別れを経験しても尚その気持ちは冷めず、金ではなく彼女に会うためだけに”クイズ・ミリオネア”への出演を決意したまさに愛に生きた半生。


兄・サリームは金に生きました。

幼い弟が糞にまみれながら貰った大スターのサインを売っぱらった時から、その運命は決定づけられていたのかもしれません。

商売の才覚はあるようでしたが、利己的な面もあり、身内のものを傷つけてでもスラムから這い上がろうとする根性がありました。ついには金のため、生きるためなら人殺しまでこなすギャングの便利屋に成り下がって登場します。


そんな二人の差を決定づけるのが終盤のとあるシーンです。

サリームは最後の最後で金ではなく他者への愛に生きることに決めました、しかし時すでに遅し。同じように金に囲まれているのにもかかわらず、人生をかけて愛に生きたもの・金に生きたものの埋めようのない差が非常に印象的なシーンを作り出しています。必見です。

ラティカー

ラティカーはというと金に愛に翻弄された一番の被害者であると言えます、見ようによってはインドの暗部を凝縮したようなキャラクターです。

貧困や兄弟のせいで常に危険な場所に取り残され、思い人のジャマールとはギャングの手前添い遂げることが出来ない。ジャマールの「愛している」に対し「だから何?」と返答したシーンはNTR好きは確実に興奮する場面だと思います。

危険な場所に居ましたが、その美貌のおかげで最悪な状況に陥っていません。インドのカースト底辺の貧困女性で容貌が優れない人が、いったいどんな生活を強いられているのか?考えるだけで恐ろしくなりますね。

総評

日本でもなじみ深い”クイズ・ミリオネア”を軸になっているという斬新なストーリー展開、インドの暗部、そして愛と金に翻弄された3人の若者を丁寧に描いた傑作。アカデミー賞作品賞受賞は流石に伊達ではありません。

クイズ・ミリオネアの例のあの音楽が終盤流れるのですが、めちゃくちゃかっこいいです。流れるシーンによって音楽の聞こえ方が変わってしまうのは驚きですよね。エンドロールで申し訳程度に踊るのは蛇足だと思いましたが…。

見終わった後のカタルシスも凄いので、鬱屈した気分の時に見るのをお勧めしますよ!

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