ドント・ルック・アップ ブラックコメディかノンフィクションか

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人間は正常性バイアスという致命的な欠陥を抱えている。もしもこの欠陥が人類の存亡の危機において発揮されてしまったとしたら?というブラックコメディ作品だ

2021年最後に公開された大作を考察していく

作品名(評価):ドント・ルック・アップ(A)

制作(公開年):アメリカ(2021)

監督:アダム・マッケイ

主演:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス他

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あらすじ

2人の天文学者が、ある日彗星を発見する。軌道計算の結果、彗星は確実に地球に衝突し恐竜絶滅と同等以上の破壊をもたらすことがわかったため、人類に警告するために米国大統領への直訴や、各種メディアに出演して危機を訴えていくが……

Wikipediaより

正常性バイアスとは

前述した正常性バイアスとはどういったものなのだろうか?Wikipediaを参照すると以下の様な文章が出てくる

正常性バイアスとは?

自分にとって都合の悪い情報を無視したり

過小評価したりするという認知の特性のこと

何らかの災害や事件・事故といった自分に被害が及ぶ事象が起こったとしても「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」と思い込んでしまうことを指す心理学用語だ

『ドント・ルック・アップ』はこの正常性バイアスが全人類にまで及びとんでもないことになる作品である

愚かさの煮凝り

今作を一言で表現するなら「愚かさの煮凝り」であるといえる

人類存亡の危機を伝えられたアメリカ大統領はまともに取り合わず静観を決め込み、地球に衝突するという彗星を発見した学者はワイドショーの女性キャスターと不倫、彗星爆破案は巨大企業の利権を守るために中止する…

字面だけで頭が痛くなってくる、なぜ人類存亡の危機なのにもかかわらずこれだけの失態を冒せるのか?答えは前述の正常性バイアスの存在である

「自分だけは大丈夫」「自分だけは死なない」そんな思いが各登場人物の脳裏にはちらつき、さらに資本主義の負の側面によって地球は滅亡への道を歩み始めるのだ

結果として彗星は衝突するという現実を見つめた者と、彗星など存在しないという現実から目を背け続けるものの分断が生まれ、物語はよりカオスへと陥っていく

この作品を見て我々は「なんて馬鹿なんだ」とケラケラ笑うのだろう

しかし、しかしだ

果たしてこれは単純なフィクションなのであろうか?

分断

我々はこの作品を見て笑っていられるような状況ではない。

現に地球温暖化は地球や我々の生存を脅かしているが、この世には「地球温暖化など存在しない」という者もいる

またホワイトハウスの占拠を扇動したトランプ元大統領を民主主義の破壊者ととらえる者もいれば、レプティリアンという爬虫類型異星人と戦うヒーローだという者いる

そして新型コロナウイルスCOVID-19を脅威とする者もいれば、新型コロナウイルスは捏造だという者も存在する

この両者のどちらが正しいかは現在の科学的根拠に基づくデータと後の歴史が証明するとして明示はしないが、両者の間には陰謀論やレイシズムといった思想による明確で圧倒的な分断が存在する

『ドント・ルック・アップ』は決してフィクションなのではない、現状事実に即したストーリーなのだ。

我々人類は今、地球を破壊せしめる可能性のある”彗星”と直面しているのである

彗星

彗星 夜空

この作品における彗星は、現実世界における分断を生み出した全てのモノを暗に示している

それは”地球温暖化”であったり”トランプ元大統領”だったり”ジョージ・フロイドの死”や”COVID-19”でもある。そしてこの分断を生む対象は今作同様決して目をそらしてはいけない

当初は目に見えないモノであっても彗星は確実に私たちに近づき、やがて危害を及ぼすのは明白なのだ

危害を小規模に抑えていくためには分断を最小限に食い止める必要がある、『ドント・ルック・アップ』ではその分断を一切食い止めることが出来なかった世界線の我々を描いた作品でもある

彗星による分断を食い止めるためには、

  • 科学的根拠を交え
  • 簡単な言葉で
  • 感情的にならず
  • 出来るだけ影響力のある人物が
  • 事実のみを喋る

以上が必要になってくると筆者は考える、この一つでも欠ければ分断は深まってしまう。

しかし様々な思惑が入り乱れる現代社会においては容易なことではない、影響力のある各国のトップたちは自国に有利なことしか言わないし大国には楯突かない。国際組織であっても大国の資金力によって忖度を余儀なくされ、事実とねじ曲がった情報を発信したりもする。

つまるところ我々一般市民はこの彗星が生む分断に太刀打ちすることはできない

情報リテラシー

叫び オタク 叫ぶ

では私たちはどう彗星と対峙したらよいのだろうか?『ドント・ルック・アップ』のラストシーンの様に全てを受け入れ滅んでいくしかないのだろうか?

それは違う

一般市民であっても情報の取捨選択をすることで彗星についての理解を深め、彗星に対しての正しい認識を周囲に周知していくことはできる

その際に重要となってくるのが情報リテラシー能力である、これは様々な情報に溢れた現代社会において必須の能力だ

YOUTUBEのおすすめ機能のように偏った情報を拾い集めていくのではなく、たとえ自分の主義主張と違ったとしても内容をチェックし幅広い情報の中から自分の認識と事実をすり合わせていくのである

これが現状我々が彗星による分断に対抗することが出来る唯一の方法であると思う。

今作は悪い例を面白おかしく脚色したからブラックコメディというジャンルなのだ、我々が同じ道を辿ってしまえばブラックコメディはいつしかノンフィクションになってしまう。

総評

豪華俳優そろい踏みの今作は、様々な分断に揺れる現実世界を揶揄した秀逸なブラックコメディに仕上がっている。

しかしこの作品をブラックコメディとするか、ノンフィクション作品とするかは我々の今後にかかっているのだ

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