望み 想像を絶する二者択一/親心とエゴの狭間で

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自分の子供がもし犯罪に加担しているとしたら_?子を思う気持ちとエゴイズムの間で揺れる家族を描く社会派サスペンス!

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あらすじ

一級建築士の石川一登と校正者の妻・貴代美は、高校生の息子・規士や中学生の娘・雅とともに、スタイリッシュな高級邸宅で平和に暮らしていた。

規士は怪我でサッカー部を辞めて以来、遊び仲間が増え無断外泊することが多くなっていた。

ある日、規士が家を出たきり帰ってこなくなり、連絡すら途絶えてしまう。やがて、規士の同級生が殺害されたニュースが流れる。

警察によると、規士が事件に関与している可能性が高いという、行方不明となっているのは3人で、そのうち犯人と見られる逃走中の少年は2人。

規士が犯人なのか被害者なのかわからない中、犯人であっても息子に生きていてほしい貴代美と、被害者であっても彼の無実を信じたい一登だったが……。

親と子供

あなたは自分の子供のことをどれだけ理解できているだろうか?

小さいお子さんをお持ちの方は別かも知れないが、自信を持って「全て」と答えられる人間は恐らくいないのではないだろうか。


幼少期、子供は親とほぼ同化した存在である。親が決めたものを食べ、親が決めた服を着て、親が決めた場所へ行く。子供にとって親は全てであり、親にとって子供は自分の一部だ。

しかし子供は日々大きくなる、成長するうちに親に預けていた体重をだんだん軽くしてゆく。

学校でどんな人間と仲良くして、あの日の部活でこんな失敗をして、自分の部屋ではあんなことをしている。かつて自分自身と同一のものであった子供の行動や感情は、いつしか自分と分離して”“となる。

特に思春期世代の子供と親の関係性は希薄になり、険悪になり”他”が濃くなっていく。ネットの発達により、家族や友人達に対する態度とは違う人格を持つ子供の数も増えていることだろう。

それでも親子の関係は、周波数の合わないラジオのように微弱に続いている

今作はそんな親と子供の繊細な関係性にスポットを当てた作品だ。

まぁ俺は子供部屋おじさんなんで適当に言ってるんだけど

二者択一と人間としてのエゴ

何不自由なく暮らす一家に突然降りかかったのは、息子が犯罪の被害者か加害者のどちらかになってしまったという事実。生きていることを願えば息子は犯罪者、加害者でないことを願えば息子は死んでいる…そんな究極の二者択一を迫られることを意味していた。

母は犯罪者としての息子も受け止める覚悟を決めただ生きていて欲しいと願い、父は息子が犯罪を起こすとは思えないと信じた。相反する考えを持った夫婦を演じるのは実力派の堤真一と石田ゆり子だ。

一方で中学生である妹は世間体を保とうとする自らのエゴと、大好きな兄の無事を想う気持ちの板挟みに苦しむことになる。その感情の機微を余すことなく演技に落とし込んだ清原果耶は見事!

究極の二者択一と同時に、自分のした選択が我が身可愛さのエゴイズムによるものなのか?純粋な愛情によるものなのか?という家族と人間の本質に切り込んだ作品となっている。

ニュースの影に

そんな非常な選択の狭間で揺れる家族を描くと同時に、今作は犯罪被害者家族と加害者家族の現実を一度に味わうことのできる作品でもある

押し寄せるマスコミ、厳しすぎる世間の目、離れていく家族の心、やがて訪れる無情な死。

のんべんだらりと生活している上では絶対に体験できない世界を垣間見ることができ、犯罪の数だけ苦しむ被害者・加害者家族がいることに気づく。

社会や普通という言葉に埋もれがちな弱者にフォーカスしている点は同時期に公開されたミッドナイトスワンと似通っている、日本という国は一度レールから外れると元の生活には二度と戻れない国だということを再確認し、背筋が寒くなる。

考察

作中、堤真一演じる主人公・一登はたびたび自身が設計して建てた自宅の前に立ち、家全体を眺めるシーンがある。ある時は歪み、ある時は頼もしく聳え立っていた家を考察していこう。

歪んだ家

息子である規士が切出しナイフを外へ持っていった事実がわかった後、一登から見た家は地軸が狂ったように歪んでいた。

これは自らが設計した完璧に近い自宅と、その中に生活していた自分達家族のアンバランスさを表現したシーンだと思われる。昨日まで普通だと思っていた家庭は、蓋を開ければ他人の集まりのように脆弱な集団であったことに気づいた、足元が崩れるような感覚がスクリーンを通して伝わる場面である。

ラストシーンの家

事件が解決した後、再び一登が自宅の前に立つと、家は頼もしく真っ直ぐ建っていた。

家族同士の繋がりの希薄さに気づいた一登であったが、その希薄さの中にも家族の絆は確かに存在した。

息子に話した言葉は確かに彼の中に芽吹いていて、息子を信じ抜いた自分と、友人を命をかけて守った息子を育てた自分という父としての自己肯定感を取り戻した一登には、もう迷いはなかった。

彼を通して見た自宅は二度と歪むことはないだろう。

総評

TRICKやSPECのような堤節の効いたギャグシーンは一切ないのは作品上ない、少し寂しいが真面目に振り切った時の堤幸彦の本気を見ることができる正に社会派な一本。

ニュースの影に隠れた被害者・加害者家族という見落とされがちな人物たちにフォーカスした珍しい作品でもあり、考えさせられるところの大きい作品であると思う。一見の価値あり。

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