故S.キューブリック監督の卓越した映像美と撮影技法で描かれる、サイコホラーの古典とも言える偉大な作品です。
あらすじ ~wikipediaより~
コロラド州のロッキー山上にあるオーバールック・ホテル。
小説家志望であり、アルコール依存症を患っているジャック・トランスは、雪深く冬期には閉鎖されるこのホテルへ、管理人としての職を求めて、妻のウェンディ、一人息子のダニーを引き連れて訪れた。
支配人のアルマンは、「このホテルは以前の管理人であるチャールズ・グレイディが、孤独に心を蝕まれたあげく家族を斧で惨殺し、自殺したといういわく付きの物件だ」と語るが、ジャックは気にも留めず、家族と共に住み込むことを決める。ダニーは不思議な能力「シャイニング」を持つ少年であり、この場所で様々な超常現象を目撃する。
ホテル閉鎖の日、料理長であるハロランはダニーとウェンディを伴って、ホテルの中を案内する。自身も「シャイニング」の能力を持つハロランは、ダニーが自分と同じ力を持つことに気付き、「何かがこのホテルに存在する」と彼に語る。そして、猛吹雪により外界と隔離されたオーバールック・ホテルで、3人だけの生活が始まる。
ホテルが持つ”怪異”で徐々に精神を病んだジャックは、謎の存在に命じられるまま妻と息子を手に掛けようとする―
センス&最新技術
不気味な双子、エレベーターから流れ出る大量の血、バスタブから這い出る不気味な老女、そして叩き割ったドアの隙間から覗く狂気の表情。
後世に多大なるインパクトを与え、最早ホラー映画のアイコンにまでなっている本作。
キューブリック監督の独特な恐怖演出や色彩センスが全てのように思われがちですが、実は今では当たり前となった当時の最新撮影技術が使用されているんです。
ステディカム
その最新技術というのが”ステディカム”でした。
このステディカムとは映画撮影の他にもサッカー中継などに使用されるものであり、 カメラを持って歩いたりあるいは車載した際に、その移動によって生じるブレや振動を抑え、スムーズな映像を録ることを目的に開発されたカメラ安定支持機材(=カメラスタビライザー)だったのです。
この機材の登場により撮影の幅は大きく広がりを見せることになります、これは以前はブレを抑えるためにレールを敷いて撮影しなければならなかったからであり、なおかつそのレールをフレームに入れないような画作りを選択することを強いられていたからでした。
今作でも冒頭のダニーが三輪車でホテル内を走り回るシーンや迷路内での命がけの鬼ごっこのシーンなどで使用され、手前から奥までシームレスで移動しているシーンを撮影できるようになり画面に立体感が生まれる印象的なシーンとなりました。
病的な完璧主義者
映画界の巨匠といわれる人物はチャップリンをはじめどこか偏執的な完璧主義者が多く、ご多分に漏れずキューブリック監督もそんな完璧主義者の一人でした。
まさにこの映画の象徴ともいえる「叩き割ったドアの裂け目から顔を出したジャック・ニコルソンの狂気に満ちた表情」の理想を求めるあまり、約2秒というごく短いシーンの撮影に約二週間、190以上のテイクを費やしたことも有名な逸話の一つです。
さらには映画のラストシーンは132回ものテイクを費やしましたが、一般公開時にはキューブリック監督自身がそのシーンを削除・廃棄したという話もあります。
こうした病的ともいえる完璧主義の結晶があの表情であると考えると、非常に感慨深いものがありますね。
当時『カッコーの巣の上で』でアカデミー賞主演男優賞を獲得してノリにノッていたジャック・ニコルソンをそこまで酷使できたのも、キューブリック監督の威光と技量の高さがうかがえます。
グレイディ・ツインズ
ジャック・ニコルソンの狂気の表情と同様に、今作の象徴的なキャラクターとなっているのが”グレイディ・ツインズ”と呼ばれる双子の亡霊です。
この双子には元ネタがありました。
キューブリック監督が10代の頃、たまたま自身の撮ったルーズベルト大統領の死を伝える写真が売れたことが縁で写真雑誌『ルック』誌に見習いカメラマンとして在籍していたことがありました。
その際に上司として働いていたのがダイアン・アーバスという女性で、見習いであったキューブリックをいたく気に入り指導しました。キューブリックにとって初めての社会で師事した彼女は特別な存在であったと思います。
そんなアーバスですが、晩年フリークスに興味を惹かれ精神のバランスを崩し自殺してしまいました。彼女の死後キューブリックは彼女の代表作の一つである双子を題材とした『Identical Twins, Roselle, New Jersey, 1967』をオマージュ、それが”グレイディ・ツインズ”であり、彼女の死に花を手向けたのでした。
現在のグレイディ・ツインズ
ちなみに現在のグレイディ・ツインズはきっぱり役者を辞め、一人は文学を学び、もう一人は微生物学者として活動しているそうです。
ちなみに2014年には何故かTwitterも双子で開始、現在もそれなりの頻度でつぶやいているから驚きです!
総評
40年前の作品とキャプションが付いていなければ分からない、 今見ても斬新さを感じるシーンばかりが画面を覆いつくす2時間半。
ホラ―映画ファンなら一度は見なくてはいけない作品であると思います。
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