何だこの…何?
あらすじを見ただけだと馬鹿馬鹿しい映画にしか見えない、けど実際見てみたら秀作!
ハリー・ポッターシリーズでお馴染みのダニエル・ラドクリフが死体という異色の役どころに挑んだ意欲作!
あらすじ
無人島に流れ着いたハンクは絶望から自死しようとしていた。
その矢先、彼は浜辺に打ち上げられていた死体を発見、ハンクは人工呼吸による蘇生を試みたが、失敗に終わってしまう。
その死体は腐敗に伴うガスで膨れ上がっており、原形は留めているものの水に浮くほど。
しかも、ガスの排出(ほぼオナラ)によって死体は今にも沖合に出ようとしている。
意を決して死体に飛び乗ったハンクは、ジェットスキーの要領で死体に乗って沖合へと向かう。
何とか大きな島にたどり着けたものの、スマホは一向に電波を拾わない。
しかしハンクはもう一人ではない、”一人と一体” の不思議な旅が始まったのだった!
どう形容していいか分からない
今作、非常に評価が難しい。
というのも余りにもプロットや設定が 荒唐無稽すぎるからだ、
奇妙すぎる点は以下の通りだ
- 死体の尻から出るガスで無人島から脱出する
- 死体の中に溜められた水(全然汚くない)で水分補給する
- 死体がしゃべりだす
- 死体で髭を剃る
- 死体とちょっといい雰囲気になる(主人公も死体も男)
- 結局キスまでいっちゃう
- 死体が勃起する
- 勃起したナニがコンパス代わりになる
まさにタイトルのもじり元になったスイス・アーミーナイフ(=十徳ナイフ)のように
本当に何でもできる死体が登場するのだ!
そのあまりにもぶっとんだ世界観が災いし、サンダンス映画祭ではついて行けなかった観客が途中退席したという。
何ともったいない!この映画結構面白いのだ!
万能死体をどう見るか
この万能な死体、二通りの見方ができると思う。
本当にこの死体が存在している
この場合は映画のストーリー展開通りに進んでいくので特に説明は要らないと思う。
死体など一切存在していない
基本的にこのストーリー自体が主人公の妄想だというパターンだ。
まずこんなにご都合主義の権化が創作物の中であっても存在するはずがない、
さらに死体が現れたのは主人公が首をつっている最中であったという点だ。
「走馬灯なんて起きないんだな」と首つり失敗後の主人公は嘆くが、
恐らくこの死体との大活劇こそが彼の”走馬灯”であったのではないかと思う。
父親とは馬が合わず、女の子と仲良くできるようなコミュ力もなく、
現実から逃げた結果である無人島生活で最後に求めたモノ
”自分に都合の良く何でもできて・喋らず・自分を蔑む女性ではない”
そうした欲望を詰め込んだ末が「万能な死体」であったのではないかと思う。
自分ができなかった”青春”や”恋愛”をこの死体を通して経験したかったのではないだろうか?
映像と音楽の勝利
こんなめちゃくちゃシュールな映画を見ているのに、何故かラストまで見るとジーンとしてしまう。
それはひとえに映像と音楽の力である。
劇中ちょくちょく挟まれるスローモーション、主人公や死体が歌う鼻歌
そしてストーリー展開のおテンポの良さ
シュールな世界観にアートな雰囲気を感じさせる。
総評
人は見た目で判断してはいけないというが、映画もまたこれに同じであった。
バカみたいなストーリーであっても、実際に見てみるまでは判断できない
そのバカみたいなストーリーも設定も、味付け次第でいくらでもいい作品になることを学んだ。
そんな考えに至っただけ見てよかったと思える一本だ。
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