新しい映像体験、そして通常の時間軸と逆行する時間軸が入り乱れる難解なバディアクションの話題作!
あらすじ
ウクライナ、キエフのオペラハウスにおいてテロ事件が発生。
「プルトニウム241」を奪取したスパイを救出するために、テロ事件の解決のために投入された特殊部隊に偽装してオペラハウスに突入したCIA工作員の男は、ケース内のプルトニウムとされた物が謎の部品であることを知る。
また、スパイの救出には成功したものの脱出の際に、ロシア人たちに捕らえられてしまう。
彼は拷問の隙に自決用の毒薬を飲むが、それは実は睡眠薬であり、目を覚ますとフェイという男からテロ事件は自分たちの組織に加えるためのテストだったことを明かされる。
呼び出された場所にて未来からもたらされたという『逆行する弾丸』の存在、それらを利用して世界を破滅させようとする武器商人アンドレイ・セイターの存在を知った男は協力者であるニールと共にセイターの妻であるキャットと接触を図るなどし、セイターの陰謀の打破を目論む。
複雑すぎる設定
TENET、逆行弾、プルトニウム241、量子力学にパラドクス…
専門用語や独特の世界観が飛び交うのはクリストファー・ノーラン特徴ではありますが、今作は中でも飛び抜けて難解!
一回見ただけで全てを把握できた方は恐らく誰1人としていないのではないか、という位の複雑な設定と練りに練られた脚本は見事というほかない
事前知識を入れずに見ている身としてはジョジョ7部のチョコレートディスコ戦を見ているような気分になる。
そこで筆者なりに今作の時系列をタイムスケジュール風にまとめてみた、ここから先はネタバレ注意だゾ!
時系列・その1
- 主人公・劇場テロの現場に突入
途中犯人グループに銃撃されるもニールによって助けられる
- 主人公・TENETの存在を知る
- 主人公・プリヤに接触
セイターの存在を知る
- キャット・船上から飛び込む女性を見る
セイターとの確執は決定的なものとなった
- 主人公・キャットと接触
アホほど強い主人公、アレッポの贋作という交渉材料を提示
- 主人公・オスロ空港で飛行機を突っ込ませる
- 主人公・空港内で自分自身と会敵
自分自身と戦うもマスクを被っていたため対消滅を回避、戦っていたのは後述のキャット救出作戦で逆行中の主人公
- 主人公・セイターと接触
第一印象は最悪
- キャット・セイターをセイリング中に突き落とす
- 主人公・プルトニウム241の輸送ルートを聞き出す
- 主人公・ハイウェイ上でプルトニウム241を奪還
- 主人公・キャットと引き換えにプルトニウム241を返却
道中逆行しながら横転する車を目の当たりにする、これも未来から来た自分だった
- 主人公・セイターと回転扉を発見
ここから物語が目まぐるしく動いていく
時系列・その2
- アイヴスの部隊が突入してくる
実はTENETを知っている人間は大勢いたのだった
- 主人公・初めて回転扉を使用
時間が逆行していく
- 主人公・逆行中に事故
セイターによって低体温症に
しかしめっちゃ強いのでなんとかなった
- 主人公・再びオスロ空港へ
キャットを助けるため別の回転扉に入る必要があった
- 主人公。倉庫内で自分自身に会敵
ここでバタバタ背泳していた意味がわかる
- セイター・アルゴリズムの発動をセッティングする
それ自身が武器だと思われていたプルトニウム241はタダの部品に過ぎなかった
- 主人公・アイヴスの隊と共にアルゴリズム再奪還作戦を展開
その間キャットは逆行を続けセイターとの確執が深まった日まで戻った、これはセイターの自殺を食い止めようとするためである
- 主人公・地下でアルゴリズム奪還に成功する
過去ではキャットがセイターを殺害、その後本当の意味で自由になった彼女は自分自身の前で華麗に海に飛び込むのだった
- ニール・地下から主人公たちを引き上げる
この時点までにニールは一回逆行から通常の時間軸に戻り、主人公たちにクラクションで警告するが徒労に終わっている
- ニール・主人公に雇い主の素性を明かす
- 主人公・プリヤを殺害
- 主人公・ニールに過去の自分を助けるよう指示
世界を第三次大戦から救おうと暗躍していたのは主人公自身だった、本当の意味で主人公は“主役”だったのだ
苦労人ニール
さて、今作は端的に言えば未来の主人公が過去の自分自身を助けて第三次世界大戦を防いだ、という現代風ターミネーターみたいなストーリーだったわけで
見終わってみると、その主人公をサポートしたニールに拍手を送りたくなる
回転扉を使って長い年月を孤独に逆行し続け、劇場のテロから陰ながらず〜〜っと主人公をサポートしてきた苦労人なのだから。
もちろん主人公がいなければ第三次世界大戦が起きていたことは間違いないが、このニールという男がいなくてもそれは同じだったろう、野暮かもしれないが彼が主人公のスピンオフも是非見てみたい。
1番最初に主人公に会った時、一体どんな感情だったのだろうか?
TENETとはなんだったのか?
TENETは英語で“主義“を意味する英単語、前後どちらからでも同じように読める回文になっている
これは逆行と順行する時間軸を示したものでるのは間違いないが、結局作中でTENETが作戦の名称なのか組織の名前なのか、はたまた別の名称なのかというのは明示されなかった。
ではTENETとはなんなのか?
TENETは主義の他にも信条などの意味がある単語であるが、語源はラテン語の“tenere“で“保持する“という意味を持つ単語だ
ここから推測されるのは、人間の持つ信条・主義の保持、つまりは“人間の矜持を持ち続ける“ということ。
時間を逆行させ過去の人類を対消滅させることのできる圧倒的なアルゴリズムを前に、共助共存していくための知能が備わった人類の矜持を持ち続けよう!そんな前向きな意味がTENETという言葉に表れているような気がする。
結局作戦名なのか組織名なのかは分からないが、いい意味の暗号であることには間違い無いだろう。
総評
期待して見に行ったとしても、その高いハードルを優に超える作品を作り続けるクリストファー・ノーラン
しかし今作はその努力が常人の達しない域まで及んでしまっていて、我々一般人からすると理解ができなくなってしまっている、
細部までを知るにはネタバレを見て知識を補完するしかない、予備知識無しに全てを理解することは非常に難しく、その点は少しマイナスポイントだ
しかし、それを補ってあまりある逆行が生み出した今まで見たことのない映像、そして入り組んだ脚本を劇場で目の当たりにできるのは今しかない。
その難解さだって、複数回劇場に足を運ぶ人を増やすことに一役買っているとすれば凄まじい戦略だ。
実はノーラン監督も逆行してきた未来人なのかも知れない
まぁそんなのは映画に”関係ない、異な意見か”
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