こまけえこたぁ良いんだよ!ブン投げであってもご都合主義でもラストシーンさえ良ければ名作!
ジャンルは違えど「マーダーライドショー2」味を感じるゴリ押し映画、それが「メランコリック」なのだ!
あらすじ
東大を卒業したものの定職に就くことができず日々悶々と過ごす鍋岡(なべおか)は、たまたま利用した近所の銭湯「松の湯」で同級生の副島(そえじま)と出会う。
よく松の湯を利用するという副島の勧めにより、若干の下心もありつつ松の湯のバイトに応募し採用された鍋岡は営業終了後に明かりの点く銭湯に興味本位で入ってしまう。
そこで見たのは殺人の現場。
銭湯「松の湯」は人を殺すための場所として貸し出されていたのだった!
それまでうだつの上がらない生活をしていた鍋島は急転直下、人殺しや非合法な世界へと巻き込まれていくこととなる…
どんな人が楽しめる映画なの?
昨年一世を風靡した「カメラを止めるな!」が受賞したウディネファーイースト映画祭で新人監督作品賞を長編処女作でいきなり獲得して鳴り物入りで公開された今作。
とにかく色んな要素を内包しているため、かなり刺さる人が多い。
特にお勧めできるのは「今現在の職業や待遇に納得がいっておらず、童貞もしくは彼女がいないコミュ障で、自分も何かが成し遂げられるはずだという自己暗示に近い中二病を患っている」人間だ。
全部が当てはまっていないというあなたも心配はいらない、一部分でも心当たりがあれば十二分に楽しむことができるゾ!
ボーイミーツマーダー
頭でっかちで自意識ばかり高いコミュ障の青年が女性との触れ合いを通して大人になっていくという筋のいわゆる「ボーイミーツガール」の作品は枚挙にいとまがないが、今作を荒唐無稽としているのが主人公を大人にしている要素が「女性」でもあり「殺人」でもあるという点なのである。
主人公は一旦殺人を受け入れた後はあまり葛藤がない、むしろ自分が輝けるのはここなんだという変な自意識さえ芽生える。
ここには直接自分の手では加害しないために起こる当事者意識の欠如からきているものと思われる、むしろ主人公は自分の人生すらも当事者意識というものが薄かったのではなかろうか、とんとん拍子に上手くいっていた人生が就職失敗という一度の失敗で真人間とは思われなくなってしまう。
「東大出たからって偉くなって幸せにならなくちゃいけないのか?」という言葉は自分に言い聞かせる部分も多かっただろう。
そんな殺人の片づけが日常化していた中、自分の命のために一転直下の自らが殺人に手を染めなくてはいけなくなってしまう。
そこで初めて自分の境遇とこれから行わなければいけない命を賭した殺人への当事者意識が芽生える。前日までイチャコラしてた彼女と別れ、実際に拳銃で訓練をして、弱弱しかった顔に覚悟がさす。
以上のシーンはコメディタッチに描かれていたが、個人的にはかなり熱かった。
ご都合主義であっても
本作、かなりご都合主義の点は多い。
- 銭湯のバイトなのに朝帰りをする息子に疑問を抱かない両親
- 胸を撃たれた金髪とフィリピン人を家に入れて助けてくれと叫ぶ息子をすんなり受け入れる両親
- 付き合ってくれといえばすんなり付き合い、別れようとなったらすんなり別れてくれるメチャクチャ都合のいい彼女
- 急に新しいことをされると困るという理由で裏切る銭湯のおっさん(ただしこの裏切りには「うしおととら」でいう秋葉流味を感じた)
- 金髪でめちゃめちゃチャラくて人当りがいいのに童貞
正直あげればもっとある、もっとあるがその不条理ギャグさがシュールでいいのだ。
幸せの形
以上の様なシュールなご都合主義を吹っ飛ばすのはラストシーンの主人公の独白である。
「人にはたまにそのために生きていると思えるような楽しい瞬間がある、僕はその瞬間のために生きているのかもしれない」
東大卒でいい仕事について偉くなるというステレオタイプな幸せが全てではない、そんな人に押し付けられたような幸せではなく、友達と酒飲んで好きな話をして馬鹿笑いする。
そんな一瞬こそが本当の幸せで、生きる理由なんじゃないか?思わずハッとさせられた。
このラストシーンはスルメのように味わい深い、映画を見終わった直後よりふと楽しいなぁと思う瞬間が訪れた時により強く思い出されるだろう。
映像自体も手持ちカメラで撮っていてかなりぶれていたり、構図的になんか微妙だな、血糊もなんか安っぽいな。
確かに粗削りな「メランコリック」であるが、その荒々しさを帳消しにするメッセージ性があると思う、若い年代の方には是非見てほしい映画だと思う。
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