冒頭からほとんどのシーンが音ハメ!
アクション・音楽・恋愛、映画において大事な要素がギュギュッと詰まった名作だ!
作品名(評価):ベイビー・ドライバー(S)
制作(公開年):イギリス・アメリカ(2017)
監督:エドガー・ライト
主演:アンセル・エルゴート、リリー・ジェームス、ジェイミー・フォックス他
あらすじ
天才的なドライビング・センスを買われ、犯罪組織の“逃がし屋”として活躍する若きドライバー、通称「ベイビー」。彼の最高のテクニックを発揮するための小道具、それは完璧なプレイリストが揃っているiPod。
子供のころの事故の後遺症で耳鳴りが激しい彼だが、音楽にノって外界から完璧に遮断されると、耳鳴りは消え、イカれたドライバーへと変貌する。ある日、運命の女の子デボラと出会ってしまった彼は犯罪現場から足を洗うことを決意。
しかし彼の才能を惜しむ組織のボスにデボラの存在を嗅ぎ付けられ、無謀な強盗に手を貸すことになり、彼の人生は脅かされ始める――。
音ハメ
今作第90回アカデミー賞において音響編集賞・録音賞・編集賞という3部門でノミネートされた作品であるが、その全ての賞でダンケルクに敗北。
ダンケルク未視聴の筆者からすると、ベイビー・ドライバーに勝つダンケルクってどんだけ凄いんだ…!?と感じるほどの出来なのだ。
何しろ本編のほとんどを古今東西様々なジャンルの音楽が彩り、更に主人公をはじめとした演者はその音楽に合わせて演技をするのだから!
これはアーティストのMVや、ニコニコ動画でかつて一時代を築いた”音MAD”に多用される表現方法で、所謂”音ハメ”という表現技法。
5分ほどの短い作品ならいざ知らず、2時間近い作品のほぼ全編が音ハメ、一体どれだけの時間がかかったのだろうか…
特に”テキーラ”が流れるシーンは発破も相まって圧巻!血生臭い場面でも音楽とテンポの良さで押し切ってしまうのは、『キングスマン』を彷彿とさせる
考察
さて、そんなテンポ極振りのベイビー・ドライバーを考察していこう
ベイビーの生い立ち
主人公のベイビーであるが、生い立ちに関しては時々挿入される回想シーンから推し量るしかない。
以下に彼の生い立ちをタイムライン付きで考察していく
- 誕生ベイビー誕生
ボーカリストの母と酒飲みの父の間に長男として生まれる。幼少期は幸せに過ごしていた様子だった
- 4〜5歳くらい誕生日に初代iPadを貰う
ベイビーにとって両親からの肩身となるキーアイテム
この頃から父親の飲酒量が増えていく
- 父の母へのDVが始まる
家庭内の不和、とりわけ父親の飲酒が原因のDVが始まる
ベイビーは両親の喧嘩の声が聞こえないようにiPodで音楽を聴き始める
- 交通事故に遭う
何故か運転中に始まってしまった夫婦喧嘩が原因で事故に遭う
ベイビーを残して両親は事故死、ベイビーはこの事故で顔に傷を負い耳鳴りが止まらなくなってしまう
- ベイビー、ジョセフに引き取られる
ジョセフは耳と足が不自由なため、ベイビーはコミュニケーションのほとんどを手話で取ることとなる。
発話によるコミュニケーションは必要最低限に行っていたため、単語の読み方を間違えてしまうことが多く、T-REXを「トレックス」と呼んでしまったりする
- 10代ドクの車を盗み弁償を迫られる
天才的ドライビングテクニックを活かし車両泥棒で悪銭を稼ぐようになる
しかし運悪く裏世界と繋がりのあるドクの車を盗んでしまい、トランクに入っていた麻薬の弁償を迫られる
- 映画冒頭
“85号線のゴースト”と呼ばれるほどの凄上ゲッタウェイ・ドライバーへと成長する
彼自身の言葉
そんな不遇な青春時代を送ってきたベイビーは、他人と積極的なコミュニケーションを取らなかった
劇中ベイビーはドクの下で働く際、同僚と仕方なく喋る時に”自分の言葉”を使って会話をしていないのだ
以上はベイビーが発したセリフであるが、全て冒頭ベイビーが見ているTVに出てくるセリフなのである
これは彼の自己防衛本能による行動なのではないだろうか?
自分の全てを曝け出し愛していた両親は簡単に仲違いし、自らも瀕死の重傷を負った自己によるトラウマから、ベイビーは心を閉ざしてしまっている
“自らの言葉”を発することは自分の心を曝け出してしまうことに繋がる、結果彼は自分の言葉で話すことをやめてしまった
初対面のデボラを口説いた時のセリフも彼の言葉ではなかったし、初デートの場所もバディの言葉を借りていた
しかし最終的にデボラを口説き落としたセリフは「君は僕にとって奇跡だ」という彼自身の言葉だった。
ベイビー・ドライバーは派手なカーアクションと音ハメに目を奪われがちではあるが、単純にボーイミーツガールものの青春映画でもあるのだ
総評
全編に渡る音ハメによって、見ていて気持ちのいいリズムに溢れた作品。何故だか懐かしい気分になってしまうのは音MAD世代なのだからだろうか?
非常にテンポがいいので2時間があっという間に過ぎていく感覚を覚える。アクションや恋愛、ミュージカルなど様々な要素を詰め込んでいるので幅広い層にオススメできる一本である。
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