今では確実に地上波放送できないであろうシャム双生児の兄弟の復讐を巡るカルトホラームービーです!
あらすじ
頭部と両腕しかない異形の姿のベリアルは弟のドウェインの腰に寄生しているシャム双生児。
3人の医師の手術により彼らは強引に切り離されたが、ドウェインはバスケットケースにベリアルを入れ、彼らを切り離した医師たちに血みどろの復讐をしていく。
しかし、ドウェインが若い女性と恋に落ちたことから兄弟の間には溝が生まれ、恐ろしい悲劇を迎える。
チープさが堪らない
1982年3,500ドル(当時の日本円で800万円ちょい)という超低予算で撮影された今作。
撮影場所もほとんどが古びたマンション、役者も総勢30人いくかいかないかという規模の小ささで監督が如何に金策に苦心して撮影したかが分かります。
撮影技法もチープさが目立ちます、
異形のベリアルが医者にその強靭な爪で襲い掛かるシーンは、大概が怪物の腕しか見えません。
実はこの腕、今作の監督ヘネンロッターのもの。
監督がゴツゴツした手袋を着けて役者が迫真の演技をしているという訳なのです。
更にチープなのがベリアルが暴れまくるシーンです。
自動で動くロボットやラジコンなんて高価過ぎるので、なんとストップモーションでの撮影です。
金はかかってないけど手間はかかってるんですね!
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ホラー映画と性
今作扱うテーマがアンタッチャブルなだけに、
展開のキーとなるものもなんとなく物悲しいのが特徴です。
何がキーとなるかって「性欲」なんですよね。
弟のドウェインは健康な肉体でイケメンなので女にも普通にモテます、対するベリアルはそもそもモノがついてないですし見た目からして人類に受け入れられません。
それなのに普通の男性としての性欲はあるわけです、女性下着を危険を冒してまで盗んだりします。こんなに物悲しいモンスターがかつていたでしょうか?
通常こうしたホラー映画のモンスターやクリーチャー自身には、性的に倒錯したサイコパスを除いて性描写はありません、むしろ性行為を忌避するがごとく行為に及ぼうとする陽キャを惨殺しさえするのです。
これはホラー映画監督やホラー映画視聴者のボリュームゾーンにはスクールカースト下層の所謂「ナード」が多いことにも起因します。
陽キャに好き勝手にいじめられ、彼女もできず童貞のまま不遇の時を過ごした学生時代の鬱憤を創作の形で昇華し自分の中で消化するのです。
しかし今作はさらに上を行きます、「自分が性行為出来ないのに弟はズルい」という幼児的凶暴性を持ったモンスターがベリアルなのです。
このタイプは正直他のスプラッタホラーでは見たことがないのでとても新鮮でした。
というかこのタイプのモンスターを生み出せる監督や脚本はかなり歪んでいるとみて間違いないような気がします。
80年代の風俗
1982年公開当時のファッションや髪型、生活様式をリアルに知ることが出来るのも今作の特徴の一つです。
何って主人公とヒロインの毛量が半端じゃない!
このシーンなんて画面の4分の1毛です。
そうかと思うとハゲも出てくるのですが、ハゲかドフサしか存在しえない世界なのでしょうか?
総評
現代ではできないインモラルなとこを攻めたカルトホラーの傑作。
モンスターも性欲に突き動かされる幼児的凶暴性をもった珍しいタイプなので、
スプラッタホラーをよく見る方にもおすすめの一本です!
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