パラサイト半地下の家族 感情揺さぶられるブラックコメディ

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S級作品
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第72回カンヌ国際映画祭では韓国映画初となるパルム・ドール(=カンヌ国際映画祭での最高賞)の受賞を果たし、鳴り物入りで日本公開されました!

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あらすじ ~公式サイトより~

過去に度々事業に失敗、計画性も仕事もないが楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク。大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ。美大を目指すが上手くいかず、予備校に通うお金もない娘ギジョン… しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“ 半地下住宅”で 暮らす貧しい4人家族だ。

“半地下”の家は、暮らしにくい。窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が悪い。Wi-Fiも弱い。水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。家族全員、ただただ“普通の暮らし”がしたい。

「僕の代わりに家庭教師をしないか?」受験経験は豊富だが学歴のないギウは、ある時、エリート大学生の友人から留学中の代打を頼まれる。“受験のプロ”のギウが向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク一家が暮らす高台の大豪邸だった——。

パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…“半地下住宅”で暮らすキム一家と、“ 高台の豪邸”で暮らすパク一家。この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく——。

2年連続アジアから

パルムドールといえば2018年是枝監督の『万引き家族』が受賞し、その物悲しいストーリーと身近に迫る格差を描いた衝撃作に世間から様々な意見が飛び交ったことが記憶に新しいですね。

そしてその翌年となった2019年パルムドールを受賞したのが今作『パラサイト 半地下の家族』で、2年連続東アジア諸国からの受賞ということになりました。

また、テーマを見てみても根底にあるのは“貧富の格差”と”家族”という類似したものを扱った作品が2年連続続いたことにもなります。

広がる格差、その中で懸命に生きる様々な形の家族は世界中の人々に刺さる内容なのでした。

半地下と格差

今作でキム一家が住む半地下のアパート、日本では馴染みがないですが韓国ではわりと一般的な光景です、全世帯に占める地下住宅の割合は日本は0.4%なのに対し、韓国はその4倍である2%が半地下や地下住宅なのだとか。

では何故半地下住宅が多いのか?その理由は朝鮮戦争時代まで遡ります。

朝鮮戦争と漢江の奇跡

米ソの代理戦争ともなった朝鮮戦争は1950年に開戦され、韓国国内を戦火に巻き込みました。

1953年に米大統領がアイゼンハワーに、ソ連の指導者スターリンが死去するなど、両国の指導者がすげ替わった事を機に休戦協定が結ばれ、今現在も韓国と北朝鮮は戦争状態が国際法上続いているのです。

そんな中、朴正煕(罷免され話題となった朴 槿恵元大統領の父)は再び北朝鮮と交戦することを想定し、市街戦となったときにそのまま塹壕や防空壕として使用できるように半地下や地下住宅の設置を義務付けました。

結果として現在に至るまで交戦は行われず、韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を経験します。防空壕として使われる予定であった半地下住宅は、格安の賃貸物件として都心に流入してくる出稼ぎ人の住居として使用されていくことになります。

格差社会の象徴

資本主義の波を受け、いつしか超格差社会へと遷移していった現代韓国では”半地下住宅”がいつしか”貧困”の象徴へと変化していきました。

格安な家賃で生活し、格安な賃金で使いつぶされ劣悪な衛生環境の半地下住宅から脱出することが出来ない負の連鎖。逆に言えばワーキングプアである市民の受け皿となったのですが。

戦火の残した負の遺産が、資本主義の負の側面を映す鏡になるとは、なんとも皮肉な話ですね。

次頁 万引き家族との対比、場面考察

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