ファンタスティック・プラネット ジブリに影響を与えた傑作SFアニメ!

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A級作品
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青い肌に感情の見えない赤い瞳、とんでもないインパクトのあるビジュアルのキャラクターが登場する今作

あのスタジオジブリのとある作品にも影響を与えたとされる一本

作品名(評価):ファンタスティック・プラネット(A-)

制作(公開年):フランス(1973)

監督:ルネ·ラルー

主演:ジェニファー・ドライク、エリック・ボージャン 他

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あらすじ

全身真っ青の皮膚で、目だけが赤い巨大なドラーク族が支配している惑星イガムでは、人間は虫けら同然に扱われていた。

孤児となった人間の赤ん坊が、ドラーグ族の知事の娘ディーヴァのペットとして育てられることに。テールと名付けられた赤ん坊は成長し、ディーヴァが勉強に使っている学習用具をこっそり使い、この惑星についての知識を深めていった。

彼はディーヴァの隙を狙っては、ひっそりと暮らす人間たちに様々な知識を共有させる

シュルレアリスム

1970年代フランスで作成されたこのアニメーションは非常に革新的な作品だった

宇宙のどこかにある惑星イガムの2種族の対立を描き、登場する種族も動物もどれもがシュールでヘンテコ

切り絵を使ったストップモーションアニメという変わった制作方法が取られているのも特徴で、

70年代の古臭い絵柄ながらも、微妙にカクつきながら生々しく画面を動いていくキモキモい世界観に奇跡的にマッチしているのだ


本編中の映像はどのシーンを抜き取ってもシュルレアリスム

未知の文明の道具や動物たち、瞑想するドラーク族のシーンはまるでルネ・マグリットやサルバドール・ダリの絵画を彷彿とさせる

あまりにも突飛すぎて全容は全く分からないけど、なんだかすごいものを見ているゾ!という気分にさせてくれる作品だ

後世への影響

© 1973 Les Films Armorial – Argos Films

あまりにも斬新で観衆の度肝を抜いた異色のSFである今作は、その圧倒的なインパクトからか後世に多大なる影響を残している。

特に生物の奇抜なキャラクターデザインと生態は、スタジオジブリの宮崎駿にも影響を与えているようだ

特に影響を感じさせたのは、『風の谷のナウシカ』に登場する王蟲という生物と、今作に登場する生物の相似である

ナウシカの王蟲は終盤傷ついたナウシカを触手で癒すという大役を任されるなど、重要なポジションの生物。見た目はワラジ虫やダンゴムシに似た形状で頭部に複数の目がついている、前述の通り傷を癒す金色の触手を持っていてナウシカの傷と破れた服も修復した

一方で今作に登場する生物で、人間の集落の近くに生息する服を作ってくれる生き物がいる

なんとコイツもワラジ虫とかダンゴムシっぽい見た目で触手を持ち、なおかつその触手を人間にまとわりつかせて服を作るのだ

規模の違いはあれど、恐らく王蟲の原型である

独創的アイデアが無限に湧き出てくるように見える宮崎駿でも、実はそのアイデアには源泉となるものがあったのだった

考察

© 1973 Les Films Armorial – Argos Films

シュールな世界観が魅力なファンタスティック・プラネットだが、ストーリーも非常に深淵で現代のことを予見しているような側面を持っている。

差別

今作ではドラーク人が知力・体力ともに惑星の頂点に君臨するのに対して人間は虫ケラのように扱われている

人間はドラーク人の子供の遊びで嬲り殺されたり、ペット扱いでへんてこりんな服を着させられたり…

これは当時も現在も行われている人種差別と迫害の暗喩にみえる

体の大きさや肌の色などが違えども手と足があり意思の疎通ができる生物、本来であれば共生できる関係なのにもかかわらず力の強さや知力の高さから一方的に迫害され殺されていく

原作の『オム族がいっぱい』からして、人類オム族はドラーク人に連行され惑星Draagsに連れてこられていることからもシュールな世界観で行われる異なる種族の戦争は、歴史上繰り返されてきた蛮行をデフォルメしているようだ

見た目

今作ではドラーク星人が迫害する側、人間が迫害される側だった。我々視聴者は言うまでもなく人間側に感情移入するだろう

「ドラーク星人め!か弱い人間をいじめやがって!」

これは我々視聴者がデカくて青い宇宙人なんかより人間に対してシンパシーを感じるからだ

もし迫害される側のキャラデザが人間ではなく、なんか真っ赤で手や足が2本ずつついているような生物だったらどうだっただろうか?

きっと我々はその生物に対してシンパシーをそれほど感じないだろう、だって自分と違うから。

これと同じことは現実世界で起きている、

日本人が海外で殺されたり事故死したのをニュースで見るとどう思うだろうか?

ガザ地域でパレスチナ難民が何十人も爆殺されたと聞いたらどう思うだろうか?

前者と後者ではきっと感想が違うものになっているのではないだろうか、だって自分と違うから。

オム族の見た目がまんま人間なのは、こうした当事者意識の差が生み出す無意識な差別を視聴者に自戒させるような意図があるのかもしれない

総評

日本人になじみ深いスタジオジブリの宮崎駿にも影響を与えたとされる濃過ぎる一本

ストーリーは単純なものの、ぶっとんだ世界観と登場キャラクターたちに頭がくらくらしてくる。今何を見せられているんだ?という部分もあるものの「何か凄いものを見た…!」という気分にさせてくれる

映画が好きだ!という方なら一度見ておいて損のない作品だ

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