この映画の第一報を聞いて衝撃を受けた方は少なくないだろう。
大吾が主演!?しかも是枝監督!?
まどろっこしくなってはいけないので、結論から言うと大吾の演技は概ねよかった、良かったけどね!!
なんか色々面白そうな要素はあったのになんであんなオチだったのか、正直不満の残る一本だった
大吾の演技
やっばり1番の注目ポイントは大吾の演技だろう
大吾は健介という人物を演じているが、粗野にも聞こえる広島弁を「広島出身の大工」ということで正当化しそのまま活かした。これは是枝監督の英断であるといえる。
変に標準語にせず、大吾の自然な演技を引き出しているが、見た目から話し方から全て普段テレビで見る大吾と変わらないので意外性は無かった。
劇中、息子の死に対して責任を感じていた健介がヒューマノイドと会ったことで変化した心境を、妻である音々に吐露するシーンがある
健介のセリフは「俺は良かったよ」で締められるのだが、この場面の大吾の演技にはマジで痺れた!
「万引き家族」のラストにある安藤さくらの独白、「そして父になる」の福山と子供が思いをぶつけ合う利根川でのシーンを彷彿とさせる、この映画の代表的なシーンといっても過言ではないだろう
息子の死、残された自分達、死因の一因となってしまったかもしれない自分のだらしなさ、やってきたヒューマノイドへの複雑な感情。全てが詰まっていた一言であった様に感じた
綾瀬はるかについて
一方でダブル主演である綾瀬はるかの演技については、なんというか、そつがない。そつがなさすぎて何だかユニクロのCMを見ている様な気分になることもあった
また綾瀬はるかが演じる音々については、すこし人間味が薄いなと感じることが多々あった
まず最愛の一人息子を亡くして、ヒューマノイドを派遣する会社のセミナーに行く冒頭のシーがあるが、セミナーを聞いてもケロっとした顔なのだ
いや、フツー泣くだろ
そしてそのセミナー後にヒューマノイドを受け入れることを決め、ヒューマノイドの性格などを亡くなった息子に近づけるため動画データなどを送る場面がある。その時も何だか楽しそうなのだ
いや、フツー泣くだろ
そしていざヒューマノイドが自宅にやってくる場面、車の助手席に乗った息子と瓜二つのヒューマノイドを見つけて「乗ってるよ!」と夫に楽しそうに報告している
いや、見つけた時点で泣くだろ
そしてヒューマノイドと対峙しての一言目、これまたニコニコ顔で「おかえり」とだけ伝えるのだ
そう、序盤の綾瀬はるかはほぼ泣かない。もちろん愛情表現が無いわけじゃない、ヒューマノイドがやってきた初日は健介に対して過剰な配慮を要求したり、夜まで時間を忘れて抱きしめて寝ていたりもする。
最愛の息子を亡くして現実感が無いことへの表現なのかもしれないが、子供を亡くした親はこんなにも泣かないモノだろうか?鑑賞しながら少し気になってしまうレベルだった。
序盤に関してはどの登場人物よりスクリーンの前の筆者が泣いていた
物語の方向性
さて肝心の映画の中身はどうだったのか、というところであるが端的に表すと
ずーーっと面白そうな雰囲気だけがずっと漂っている”雰囲気映画”なのではないだろうか
筆者は事前の情報をほぼ入れずに行ったので、「子を無くした両親とヒューマノイドの再生の物語かな」となんとなく思っていた。ところが実際ふたを開けてみたら、もちろん再生の物語ではあるけども、サスペンスやミステリ要素だったりファンタジー要素であったりジュブナイルもの的な要素があったりと、物語の軸がどこに置かれているのかが良くわからなかった。
本当に残念なのが上記で挙げた要素
・息子は誰かに誰かに殺された!?サスペンス要素
・ヒューマノイド同士で冒険だ!ジュブナイル要素
・謎の人物がヒューマノイドに接触!?ミステリ要素
このどれもが突き詰めたらそこそこ面白そうなのに、そのどれもが中途半端に回収されず尻切れトンボで終わってしまっているのが本当に本当に残念
・人間とは離れてヒューマノイドだけで暮らそう!ファンタジー要素
そして一番意味の分からないファンタジー要素がこの映画を動かしてしまっている、充電や濡れてはいけないという縛りのついたなヒューマノイドが、なぜリスクを取ってでもヒューマノイドだけで生きていかなくてはいけないのか?は明示されるわけではない。
確かにモブのヒューマノイドは捨てられたり暴力を振るわれている描写はあるが、主人公家族のもとにやってきた翔ヒューマノイドは何不自由なく生活することができ、少なくとも今の環境を捨ててまでヒューマノイドだけで生活するメリットは全くない。
もっと他の要素で尖れば面白いのに!という気持ちが、ラストシーンに向け盛り上がっているスクリーンの中とは対照的に湧き上がってきてしまうのである。
確かにこれならカンヌでの評価があまり良くないのも頷ける
なんかもうちょいできただろ
他人に勧めることはできないが、話題作りにはちょうどいい温度感の映画としか言えない
ただ、広島弁を活かすという英断を下し、俳優大吾を見出したを見出したのはやはり是枝監督の功績と言えるだろう
これだけ演技ができて、ワンシーンとは言えしびれる様なシーンを残せた大吾の次回出演作を待ちたい







