ゴジラVSコングから約半世紀前に公開された、ゴジラシリーズ第3作
アジア初開催の東京オリンピックに向けてアゲアゲだった日本を象徴するかのような、緩〜いゴジラだ
作品名(評価):キングコング対ゴジラ(B-)
制作(公開年):日本(1962)
監督:本多猪四郎、円谷英二
主演:高島忠夫、佐原健二 他
あらすじ
自社提供のテレビ番組の視聴率悪化に頭を悩ませる宣伝部長は、提供先のテレビ局員・桜井と古江に”巨大なる魔神”が目を覚ましたというファロ島の取材を命じる。
時を同じくして前作の戦いを終え北極で氷漬けになっていたゴジラが復活!
テレビの話題はゴジラで持ちきりになってしまう
ゴジラは帰巣本能によって日本へと上陸し、暴れ回り日本はメチャクチャに!
ファロ島で魔神キングコングを捕獲した桜井と古江は、キングコングをイカダで日本に持ち帰ることになる
日本にやってきたキングコングをゴジラの当て馬に使い、共倒れを画策する人類
果たしてキングコング対ゴジラの決闘の火蓋が切って落とされたのだった
時勢の反映
ゴジラといえばビキニ水爆によって生まれた大怪獣、日本を滅茶苦茶にする破壊神。まさに日本に落とされた原水爆のメタファーだった。
しかし、シリーズも第3作目となると敗戦の影も薄くなり、時代もオリンピック招致成功によるオリンピック景気に沸く1962年
辛気臭いゴジラは時代にそぐわない、と判断したのか今作は娯楽色に振り切ったエンタメ作品となっている
人間側の主人公である桜井と古江はいわゆるモーレツ社員で、多胡部長とかいうそのまんまのネーミングの部長にこき使われる1960年当時流行っていたサラリーマンコメディの側面も持っているのだ
子供向けのアニメも時勢を反映していたりするが、怪獣映画もその当時に流行っていたものやライフスタイルを垣間見ることができる
日本とアメリカ
前述の通り、原子爆弾のメタファーであったゴジラは時代を経るにつれ日本の象徴のようなキャラクターへと変貌していった
対してキングコングはモンスター映画キャラクターの元祖と言ってもいい、美女を片手にエンパイアステートビルを登った姿は、まさにアメリカの歴史といっても過言ではない
そんな2体が激突するまでに、日本側は非常に大きな努力を要した。具体的にはキングコングの名称使用料として8000万円を支払ったのだ
この8000万円は当時の映画製作費の三本分に当たる莫大な金額、東宝も社運を賭けた一本だったに違いない
さらにキングコングというキャラクターの取り扱いについても綿密な打ち合わせがなされた。
アメリカ側からしてもキングコングが敗北するのは許されないし、日本からしてもゴジラが敗北するのは納得がいかない
その結果、本編や脚本を見ても2体の勝負の決着は曖昧なまま終わっている
これは日本とアメリカという2国の意地と意地のぶつかり合いの結果とも言えるが、敗戦国という烙印を押された日本が経済成長を遂げ大国アメリカと対等な議論を交わせるようになった結果、とも言えるのではないだろうか?
キングコング対ゴジラの実現は日本の成長が成せる業だったのである
ゴジラvsコングとの関係性
今作から約半世紀経ち、2021年に公開されたのが『ゴジラVSコング』だ、曖昧なまま終わっていた両雄がついに再激突した
このゴジラvsコングにはキングコングのオマージュであるシーンもあるが、キングコング対ゴジラのオマージュシーンも存在する
それがコングの輸送シーンだ、キングコング対ゴジラでは一度目の対峙でコングが敗れた後、高圧電線で隔離された富士山麗にコングを輸送するのに気球を使用した空輸を用いている。また富士山麗に着いてコングを降下させる際には、特殊繊維を爆裂させている様子が分かる
ゴジラvsコングでも、一度ゴジラに敗れたコングをゴジラに感づかれないように地底世界の入口に運ぶため、空輸という手段が採られている。気球ではなく何機ものヘリコプターによる空輸ではあるが、コングを下降させる際のワイヤー爆裂シーンは健在。
コングが一度敗戦している点、コングの輸送方法が空輸、コングを下す際にワイヤーを爆裂させている点などがほぼ一緒であることから上記のシーンは過去作のオマージュであることが分かる。
ファンをニヤニヤさせてくれる演出がニクい
キングコングのオマージュ
もちろんキングコングが登場するという事で、『キングコング(1933年版)』のオマージュもしっかりと登場する
原作キングコングのコングは物語終盤、1933年当時世界一の高さを誇ったエンパイアステートビルの頂上で作品のヒロインであるアン・ダロウを左手に大立ち回りを演じることになる。
今作のコングは何故か捕まってしまった主人公の一人藤田の恋人を手に、これまた何故か国会議事堂に登っている。
なんで東京タワーじゃないんだ?と思う方もいるかもしれないが、東京タワーは確かに当時の建造物で日本一の高さを誇っていたが、何を隠そう1962年当時日本で一番高いビルは国会議事堂なのだった。高さという点だけでなく日本国が占領されている!という危機感を演出するためにも国会議事堂が使用されたのかもしれない。
総評
日本が敗戦してから17年後に公開された今作は、日本とアメリカを代表するキャラクターがぶつかり合うのはもちろんのこと、日本の経済成長の凄まじさが露骨に表れた一本であるように思う。
2021年公開のゴジラVSコングでオマージュされているシーンもあるため、コングVSゴジラの前に視聴するのもいいかもしれない
それにしても日本の都合でファロ島から連れてこられたコングが戦いが終わった後に日本から泳いで帰っていたのは不憫だと思った、せめてファロ島に空輸してやれよ。感心してんじゃねえよ…
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