2020年初夏、突如話題になったファウンドフッテージ作品。
実在した事件をテーマにしている以外、何から何まで全てが謎に包まれているんだもの、考察のしがいがあるってもんだ!
あらすじ
近所で起きた殺人事件。
自分の家の近くまで結婚が続いていたことと、丁度自分が無職であったことを良いことに、主人公は自分の足で事件を調べ始める。
徐々に病的に事件を追うようになる主人公。
狂っているのは自分なのか?はたまた事件の方なのか?
追い求めた先に待っていたものとはー?
プロモーション
タイトル・制作国しか正確な情報がない、という異例のモキュメンタリー作品。なんと演者はおろか監督の名前も明かされてはいないのだ!
同ジャンルの名作『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』では実在しない都市伝説を流行らせてから作品を公開したり、かなり柔軟な下地作りがあったという。
対して今作は下地作りを全くしないという攻めのスタイルを取っているということになる、口コミやSNSでの拡散力に任せた点はブレアウィッチと似通っているが、何とも男気のあるプロモーションだ。
まぁプロモーションであれば、の話であるが。
どこまでが本当なのか
モキュメンタリー作品で大事なのは、視聴者に作品がフィクションではなくノンフィクションなのだ、と錯覚させる技術だ。
白石監督の作品や、藤岡弘、探検隊シリーズに関しては、作り手と受け手の暗黙の了解でモキュメンタリーの体が保たれている。
しかし、今作その点は抜かりがない!
物語の核となる殺人事件に関しては、実際に起こっているからである。
この点がSNS上で話題にもなった所以でもある。
映像自体はフィクションぽい!しかし、この殺人事件は絶対に起こっている…じゃあこの映像もまさか…?
嘘の中に一握りの真実を混ぜると、途端に嘘が真実性を帯びるのだ。
まぁ嘘があれば、の話であるが。
事件の全体像
さて、一切説明のないまま進んでいく今作の全体像を明らかにしていきたいと思う。
まず、めちゃくちゃ分かり辛い図解を作ったので頑張って見て欲しい。
物語の核となるのはカルト宗教だ、彼らは超自然的なパワーを悪用し信者を増やしていた。
とあるきっかけで目をつけられてしまったのがサン夫妻だ、
その理由は車庫を所有していたこと。
この車庫には何らかの超自然的パワーが宿っており、牧師が儀式を行うことによって人を操り、他者に危害を加えることができる。また、儀式の際には紫色の怪光を発することがわかっている。
クァン・サンの妻はこの儀式によって我を失い、大家を刺したあと、夫を殺害することとなる。
大家は刺された後血をわざと流しながら主人公の家の付近まで走ってきた、この行動は主人公を次の生贄と決定した故のものであろう。
主人公はまんまとこの事件に興味を持ち調べ始めてしまう、途中クァン・サンからの必死の警告が入るも徐々にカルト宗教の魔の手に落ち、狂気に染められてゆく。
物語終盤、主人公は下水道から牧師の声が聞こえる様になるが、超自然的パワーを我がものにするカルト教団が相手なのであながち全てが幻聴ではない気がする。
事件の全貌を把握した主人公は全てが始まった場所、車庫へと向かうが既に狂気と超自然的パワーに魅入られてしまった主人公になす術はなく、超自然的パワーに操られて彼女に手をかけることとなる。
この作品自体が事件の真相を全て収めた証拠だった、というのがラストシーンだ。
多分病状が悪化するので精神障害がある方には視聴をオススメできない、フィクションはフィクションであると割り切って楽しむのが吉であろう。
総評
実際の事件を絡めることで物語に真実性を帯びさせ、作品全体の不気味さに説得力を与えることに成功しているキチンとしたモキュメンタリー作品。
事件は解決もせず謎に答えは一切示されないが、その尻切れとんぼさが「まだ事件は続いている」ことを錯覚させることに一役買っている。
監督も演者も明かさず、主人公に至っては最終盤まで人種さえわからないという秘密主義の徹底ぶり。本来一歩間違えればチープになりがちなモキュメンタリーをここまでの作品まで昇華させた努力に頭が上がらない。
真夜中に見るとちょっとブルッとくる一本だった。
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