牙狼シリーズでおなじみの雨宮慶太氏が監督を務めた初の劇場公開作品。
スチームパンクやSFホラー、スプラッタなど様々な要素をミックスして独特の雰囲気を醸し出す一本。
あらすじ
異星人の賞金稼ぎイリアは、逃走した太古の生物兵器”ゼイラム“を捕獲するため、地球上に制限時間付きの無人密閉空間ゾーンを作る。
ところが些細な偶然から、二人の地球人がそこに入り込んでしまう。ゾーンは制限時間を迎えると、空間の中身ごと消滅する。
足手まといの彼らを守りながら敢行されるイリアの”ゼイラム”捕獲作戦とゾーンからの脱出は成功するのか。
(Wikipediaより引用)
ミックス
宇宙からやってきた生命体を、同じく宇宙からきた美女が倒すという非常にシンプルなストーリー、ちょっとぐらい捻らないと全くウケそうにない。
そこで今作は色々な要素をごちゃ混ぜにしている、オープニングのゼイラムによる殺戮シーンは全編モノクロでSFホラーとスプラッタ要素がプラスされている。このオープニングかなりかっこいい。
本編が始まると地球人役の2人がおとぼけ役として機能、コメディ要素がプラスされている。
主人公が女性なので安易に恋愛要素も入ってきそうであるが、一切ない、この無骨なところ嫌いじゃない。
演出の方に目を向けてみると、演者の近くで炸裂する「ちょっと危ないんじゃないか・・・?」というレベルの発破は非常に迫力がある。
そしてゼイラムの不気味さを演出する方法として、ストップモーションのぬるぬるしたアニメーション、複数のフィルムを重ねて合成するオプティカル合成などの特撮が効果的に使われているほか、
当時はまだそこまで普及していなかったコンピュータグラフィクスを使用したり、かなり先進的な挑戦をしている。
このような要素が絡まり混ざり合う事によって、“ゼイラム”という不思議な世界観の作品が構成されているのだ。
アクション映画として
ではアクション映画としてはどうか?
正直“微妙”であると言わざるをえない。
確かにイリア役の森山祐子の回し蹴りやハイキックはとても綺麗なのだが、いかんせん攻撃を受ける時のシーンには一切迫力がない。
だって1ミリも当ててないもん!
あとビルの外からベニヤ板を突き破るシーンがあるのだが、めちゃくちゃシュールでギャグにしか見えない。
ただし後半の爆発を逃れるためにビルの窓から飛び出すシーン、これはめっちゃかっこいい。
顔火傷してるんじゃない?っていうタイミングが絶妙!
緊張感のなさ
前述の通りこの映画、オープニングで完全防備の戦闘員をバッサバッサと倒していくゼイラムがとてもかっこいい。
しかしゼイラムがかっこいいのはこのシーンのみなのだ。
対するのがイリアではなく何故か地球人2人なのでゼイラムが気を使ってるのかもしれないが、軽トラと壁に挟まれてもがいたり、人間が生身でそれなりに善戦したりする。
もしかしたら宇宙人ってめちゃくちゃ弱いのかもしれない
このようにSFホラーっぽい要素は本当に最初だけで、本編はコメディに寄りすぎてしまっているように感じる。
最初の雰囲気の映画を期待してしまったがため、そのテンションの落差が目についてしまう、どうせ劇中で誰かが死ぬこともないだろうな…と弛緩した時間が続いてしまっているのだ。
イリヤ不在
また、中盤から終盤にかけてゼイラムに対抗できる唯一のイリヤが戦闘シーンに不在となる。
多分イリヤ自体わりと強いため、そのまま戦わせると普通に勝ってしまうから勿体ぶったのだろう。
若林源三かよ
総評
アクションやSFホラーのような要素を目当てで見始めると中途半端さが目立ってしまうものの、様々な要素をプラスした雨宮ワールドは唯一無二。
ゼイラムのデザインや本体のみになったあとのヌルヌルしたモンスター感が非常に良くできていて、質感がどことなく似ているなぁと思ったらMEATBALL MACHINEのクリーチャーデザインも雨宮監督で少しびっくり。
SFバトルコメディと独自の世界観を楽しむことのできる一本だ。
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