RUN. 毒親とはこういうことさ

スポンサーリンク
MOVIE
この記事は約8分で読めます。

もし今まで信頼していた人が実は嘘に塗れた狂人だったら…?人生の根底が全て崩れていくサイコスリラー!

作品名(評価):RUN.(B+)

制作(公開年):アメリカ(2020)

監督:アニーシュ・チャガンティ

主演: サラ・ポールソン、キーラ・アレン 他

スポンサーリンク

あらすじ

郊外の一軒家で暮らすクロエは、生まれつき慢性の病気を患い、車椅子生活を余儀なくされている。しかし常に前向きで好奇心旺盛な彼女は、地元の大学進学を望み自立しようとしていた。

そんなある日、クロエは自分の体調や食事を管理し、進学の夢も後押ししてくれている母親ダイアンに不信感を抱き始める。

ダイアンが新しい薬と称して差し出す緑のカプセル。クロエの懸命の調査により、それは決して人間が服用してはならない薬だった。

なぜ最愛の娘に嘘をつき、危険な薬を飲ませるのか。そこには恐ろしい真実が隠されていた。ついにクロエは母親から逃れようと脱出を試みるが……。

公式サイト(https://run-movie.jp/)より引用

もしも親がサイコパスだったら

こども 迷子

あなたは生まれてから何年を親元で過ごしただろうか?

特殊な環境で過ごした方もいるかもしれないが、大体の人が義務教育が終わるぐらいまでは親元にいたのではないだろうか。親が稼いできたお金で飯を食べ、親名義の家で暮らしたに違いない。

親というのは一緒に暮らす時間の長さゆえに人生に大きく食い込んでくる、人格を形成する重要なファクターの一つと言っても決して過言ではない

人格者の親の元に生まれた子供は人格者に、節約家の親の元に生まれた子供が節約志向になるとか、そういった類の話ではない。

子供の根底には必ず親が存在する

今作は今まで自分を大切に育てくれていたと思っていた母親が、実はとんでもないサイコパスだったというストーリーだ

逃げられない恐怖

通常のサイコスリラーであれば、大体は加害者のテリトリーに主人公が入ってしまうか、誘き寄せられてしまうというのがよくあるストーリーだ

逆に言えば、加害者のテリトリーから脱することができ避難する場所があるとも取れる、その避難場所は往々にして親や家族の待つ自分の家だろう。

それが今作では根っこからひっくり返る

主人公が安らぐ場所であり唯一の居場所だった家が加害者のテリトリーであり、加害者が母親なのだ。さらに主人公はとある理由から糖尿病を患い車椅子生活を余儀なくされていて、町から離れた郊外に住んでおりスマートフォンもネット環境も無いというダメ押し。

本当の意味で逃れられない恐怖を描いている作品なのである

場面転換の妙

家を舞台とするということは物語の展開上かなり難易度が高い、なにしろ普通過ぎるし広さが無いためどこかで行き詰ってしまう。

しかし今作は普通の家を舞台としながらも移動の制限があるという主人公の特性を上手く使い、滅多なことでは入れない母親の部屋・主人公が一度も入ったことのない地下室など物語に階層を作っている。

最終的に舞台は病院へと移ることになるのだが、そこまでの自宅のシーンだけでも2度3度と見どころが設けられているのが特徴だ

さらにキーラ・アレンの映画初出演&初主演とは思えない演技が作品全体に緊張感をもたらしている

代理ミュンヒハウゼン症候群

今作の毒親ダイアンはものすごく極端な例であるが、配偶者や自分の子どもに対して傷害行為に及び自分に周囲の関心を引き寄せることで、自らの精神的満足を他者から得ようとする精神疾患の一種が実際に存在する。

それが”代理ミュンヒハウゼン症候群”と呼ばれる精神疾患だ

今作同様加害者となるのは母親が多く、被害者は子どもになることが多い。やっかいなのは表向き加害者は子育てや病気の治療に前向きに見えるという点だ

虐待の発覚が遅れ事態が深刻になる可能性が非常に高い。厚生労働省の平成20年度の統計によれば、日本では2008年4月から2009年3月までの間に心中以外で虐待死した児童67人中4.5 %にあたる3人がMSbPにより死亡している

お探しのページが見つかりません(404 Not Found) 。

自らの血を子に飲ませたり、腐った飲料を注射したり…決してフィクションの世界だけの話ではないというのが、これまたホラーである。


「ほら吹き男爵」ミュンヒハウゼン

ちなみにこの代理ミュンヒハウゼン症候群の病名のもととなったのは「ほら吹き男爵」の異名を持ったドイツ貴族、ミュンヒハウゼン男爵にちなんでいる。

なぜ彼がほら吹き男爵と呼べれるまでに至ったかという逸話がある

ミュンヒハウゼン男爵は話が非常に上手く、館に人を集めては自分のウソ冒険譚を聞かせて悦に浸っていた。そのホラ話があまりにも面白かったため、話を聞いていたものがこっそりメモを取り本を書きあげてしまった

ミュンヒハウゼンはこの本の出版をやめさせようとしたが、結局発売されてしまい人気が出てしまったため憤慨して死んでしまったというものだ

しかしこの逸話はあくまで1781年に出版された「ほら吹き男爵」の中での話であり、実際のミュンヒハウゼン男爵は話好きであったが誠実な人物であったという評が残っている

なのにもかかわらず精神疾患の病名として歴史に名を残してしまっているのは何とももの悲しい

総評

人間性を育むうえで重要な役割を果たすであろう母親がサイコパス、しかも主人公は車いすでネット環境も制限される田舎の一軒家住まい、という絶望的な状況を楽しむことのできるスリラー映画の佳作。

主人公がパソコンを操作するシーンは個人的に2021年度で一番ゾクッとしたシーンだった

ただこのダイアンの様な母親は実際に存在していて、今も子供の健康をわざと害している可能性があるというのが一番のホラーなのかもしれない。

コメント