ホラー小説界の巨匠スティーブン・キング原作の同名小説を『遊星からの物体X』で知られる名監督ジョン・カーペンターが実写化した一本。呪われた車に魅入られた青年とその周囲を描いたホラー作品。
作品名(評価):クリスティーン(B)
制作(公開年):アメリカ(1983)
監督:ジョン・カーペンター
主演:キース・ゴードン他
あらすじ
内向的な少年アーニーは、学校の帰り道にスクラップ寸前の車“クリスティーン”を見つける。
一目惚れした彼は車の虜となるが、“彼女”はただの車ではなかった。
自らの意思を持ち、“彼女”の美と自尊心を傷つける人間を襲う、恐ろしい車だったのだ。そんな事とはつゆ知らず、アーニーは大金をはたいて、“彼女”を手に入れるが・・・。
女性

今回恐怖の対象となる車・クリスティーンは、超自然的な力を持ってアーニーを支配し自分好みの青年へと変貌させていく。
男を自分好みに変え、執着していく様はまるでわがままなメンヘラ。クリスティーンという名前からも分かる通り、この車は恐らく女性をイメージして作られたキャラクターなのだ
メンヘラ=女性というのもかなりステレオタイプな考え方で、時代と逆行しているように感じるのは現代のジェンダー教育の賜物だろう
ただ今作の車がクリスティーンと名付けられたのは言語学的な側面も持ち合わせている
名詞の性

古くからインド=ヨーロッパ語族で使用される言語では、モノの名前を指す名詞には男性名詞と女性名詞が存在した
例えば今作のように車・船・国は女性名詞とされ、代名詞はsheが使われる
何故女性名詞と男性名詞が存在し、使い分けがされているのかというのは完全に解明はされていないものの、船が女性名詞である理由は以下が関係しているとされている
つまり今作もただ単に女性にメンヘラが多いから、とかいう理由で車がクリスティーンと名付けられているわけではないのだ
身近

今作は車という生活に非常に近いものが恐怖の対象となる作品である
今までも車が凶器として登場する作品はあった
『激突!』なんかはその良い例であるが、人が殺意を持って操作することで車は殺人マシーンと化してきたのである。
対してクリスティーンは人の殺意を介さず、車というモノ自身が凶器へと変貌するところが最大の特徴だ
殺意を持った人間というほぼフィクションの中にしか登場しないキャラクターは、どこか現実感がない。そうした要素を持たずしても人を傷つけるクリスティーンの恐怖は、スクリーンを越え現実感を持って我々に襲いかかるように感じる。
フューリー
クリスティーンと名付けられたこの車は“プリムス・フューリー”というクライスラー社の実在する車両
1956〜1978年までに製造されていた車であるが、今作の撮影で使用されたフューリーはその中でも1961年までの5年間しか製造されていなかった初代のもの
ちなみにフューリーはローマ神話の復讐の女神たちフリアエ(Furiae)から派生した言葉で、怒りを表す
まさに今作にぴったりな車両であったのだ
総評
ボッッコボコにされたクリスティーンが復活するシーンや、暴走するクリスティーンのシーンなどで遊星からの物体Xで培った特撮効果が遺憾なく発揮された一本。
身近な車が殺意を持って人間を攻撃するというのは今までにない発想で「まさか俺の車も…」なんていう恐怖の妄想も膨らむ作品だ。
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