ゼロ・グラビティ この邦題が残念な理由とは?

スポンサーリンク
S級作品
この記事は約7分で読めます。

実際の宇宙飛行士をして宇宙の描写が正確と言わしめ、第86回アカデミー賞において監督賞をはじめとする7冠を達成した一本

しかし一方で原題の『Gravity』に対し全く逆のタイトルをつけられてしまった残念な邦題の映画の一つでもある

※物語に関するネタバレがあります、ご注意ください※

作品名(評価):ゼロ・グラビティ(S)

制作(公開年):アメリカ(2013)

監督:アルフォンソ・キュアロン

主演:サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー他

スポンサーリンク

あらすじ

地球から60万メートル上空。

スペースシャトルでのミッション遂行中、突発的事故により、無重力空間(ゼロ・グラビティー)に放り投げ出されたふたりの宇宙飛行士。

ふたりをつなぐのはたった1本のロープ。残った酸素はあと僅か!真っ暗な宇宙空間の究極的な状況の中、果たしてふたりは無事、地球に生還することができるのか…!

残念邦題

重力 リンゴ

なぜこの映画が残念な邦題の映画と呼ばれてしまうのだろうか?

理由は簡単、この映画のタイトルが『Gravity』以外に考えられないからだ。

いやいやそんなの理由になってないよ…と思うかもしれない。しかし本当に最後まで視聴すればこの映画のタイトルはGravity以外ありえない、という結論に達する

物語の終盤、主人公ライアンは中国の宇宙船である神舟に乗り込み大気圏に突入し、なんとかかんとか湖に着水。ライアンは沈みゆく神舟から命からがら脱出し、泳いで陸に到着する。ゼログラビティの世界から生還した彼女はグラビティを全身に感じながら水中から立ち上がる。

ここで画面は暗転

そして画面全体に原題である『Gravity』がババーンと表示されるのだ!

主人公が物語序盤から求めるものは重力であって無重力ではない、もしラストシーンで邦題であるゼロ・グラビティが表示されたとしても意味が通らない

このタイトルの回収とストーリーの融合、そしてカタルシス。いずれもゼロ・グラビティという邦題では得られないものだったであろう

なぜ逆のタイトルになった?

アメリカ 日本

ではなぜ原題と邦題でここまで意味が食い違ってしまっているのだろうか?

筆者はこれを日本とアメリカの求めるモノに対する差異が生み出したと考える

日本でもし何らかのプロジェクトが立ち上がり、たとえそれが頓挫したとしても寝る間も惜しんでそのプロジェクトに注力した者は「あいつは頑張ってた、エライ!」という評価になる。

日本は結果でなく、結果に至るまでのプロセスを重視する国民性があるのだ

一方でアメリカははどうだろうか

仕事はプロフェッショナル制で期待した成果が得られなければ寝る間を惜しんで仕事をしたとしても契約を切られてしまう

アメリカはプロセスではなく、最終的な結果を重視する国民性なのである

つまり物語の結末ではなくその途中のプロセス・無重力に注目したのが邦題であって、ラストシーンの結果である重力に着目したのが原題だったのだ

ラストシーンのもう一つの意味

進化 進出

ライアンはラストシーンで重力によって這いつくばりながら水中から陸へと上がる。無重力空間から重力のある地球に帰還し、その重力を噛みしめるというシーンであるが、ここにはもう一つ意味があると思う。

今から約四億年前、人類や陸上に生活する生物全ての祖先となった魚類は海を捨てて陸に進出した

生物の陸上進出の理由については洪水や日照りで陸に押し上げられてしまった魚たちが水中に戻ろうとヒレを発達させた結果だとか、潮の満ち引きで取り残された結果だとか諸説が存在するが、陸上生物の祖先は住み慣れた海よりも陸へ旅立っていったのだ

きっと何匹もの魚類が危険を冒しては命を落としたに違いない、それでも生物は陸に可能性を見出し進出した。のちに我々はこれを進化と呼んだ

一方で現在を生きる人間も住み慣れた地球よりも宇宙に可能性を見出し、先進国がしのぎを削り合って宇宙へ進出しようとしている。今作でも人間は宇宙で生活できるようにと実験と工夫を行っている様子が分かる。

しかしスペースデブリと呼ばれる宇宙ゴミに行く手を阻まれ、結局は地球に戻ってきてしまう

主人公が水辺から立ち上がるラストシーンは、四億年前水生生物が上陸した姿を暗に示している。

つまり我々人類が宇宙を目指すのは当然だと、我々人類が進化の途中にあるのだということを意味しているのだ。

総評

元宇宙飛行士も唸る抜群の宇宙描写、そして91分という映画にしては短いながらもパニック要素や人間の強さなど様々な要素を存分に表現している。栄養素を固めたまさにカロリーメイトみたいな満足度の高い一本。

ガッツリした大作映画を見るには体力と気力がないな…というときに気軽に短時間で視聴できる映画としては『ゼロ・グラビティ』が最適解だ

スペースデブリが出てくる名作SF漫画

コメント

  1. 匿名 より:

    どちらも無重力に着目したんですか?

    • 笑い男 笑い男 より:

      コメントありがとうございます!
      あくまで私見ですが邦題は無重力、原題は重力に着目しているのではないかと思います!

      • 匿名 より:

        返信ありがとうございます!やっぱりそうなんですね!
        このページの「なぜ、逆のタイトルになった? 」 の最後の文章が、どちらも無重力になっていたので気になってコメントしました!

        • 笑い男 笑い男 より:

          校正全然できてないですね…笑
          ご指摘ありがとうございます!該当部分修正いたしました。